2 交通事故の原因
交通事故の原因は,一般に人の所為状態等に起因する人的原因と輸送機関の可動施設,基礎施設等に起因する物的原因とに大別することができるが,事故の原因は常に複雑多鮫であり,一概にどれと決定することは困難でもあり,危険でもある。
現在の交通事故関係統計では,事故の種類別分類から発生原因を類推するに止まるものが多く,それによる限りでは, 〔I−6−5表〕に示すように自動車,船舶,航空機の事故は人的原因によるものが過半数を占めて,物的原因によるものは少ないとされている。
しかしここで,一応人的原因によるとされている事故についても,その背後に潜在するものにつき注意する必要がある。各輸送機関はすべて人間が操作し運転するものであり,人間の注意が事故防止の根本要件であることはもちろんであるが,人間である以上注意力に限度があり,過失も絶滅を期しがたい。
これを補完するものは,輸送施設および保安設備の整備である。わが国の輸送活動は全般的な輸送関係投資の立ち遅れによる輸送施設の不足,保安施設の不備等の状態のうちで行なわれている。また,交通従事者の注意力の増進は,適切な運行管理,労務管理によるものであるが,これらもまだ不備のものが多く,そのため交通従事者の過労,交通従事者の不足等を招く結果となつている。
このように,現在保安設備の能九人間の注意力の限界に近い悪条件にとりかこまれた輸送活動を行なつている限り,交通事故発生を減少させることは不可能であるといえよう。人的原因による事故もこれらの観点から見直すとき,その多くが物的原因その勉を内包しており輸送基礎設備または保安施設の今いつそうの整備によつて防ぎえたものがあることをうかがい知るのである。
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