1 現状


  最近における国鉄に対する輸送需要の増大は,全国的に著しいものがあるが,国鉄の線路は,その多くが単線であるため(複線化率15%),わが国の経済成長に伴い,逐年増加する輸送需要に対しては,車両の増備,列車の増発等によつて対処し,線路,諸施設についてはその都度応急措置的な手段により当面を切り抜けてきたが,現在では線路容量をほとんど利用しつくし,もはや多くの列車増発を望めない状態にある。ちなみに,戦前最も鉄道輸送が安定していたといわれる昭和11年度と昭和38年度を比較してみると 〔I−(I)−22図〕にみられるように,人・トン・キロは5倍となつているが,車両キロは22倍にすぎず,また,本線路延長は,わずかに1.2倍であり,国鉄の輸送力不足,特に線路設備の不足がいかにはなはだしいものとなつているかをうかがい知ることができる。特に幹線区においてはこの傾向が著しく,東海道,山陽,東北,常磐,北陸,中央,鹿児島,信越,奥羽,上越の10線区で,全国の定期外旅客輸送量の68%,貨物輸送量の69%を輸送しており,また,これらの線区は伸び率も大きく,全線区に対するウエイトも大きくなつてきている。

  線路上を運転できる最大の列車回数は,設備条件,運転方式,立地条件によつて異なるが,一般的には,単線は1日80回,複線は1日240回程度とされている。現在の列車回数は 〔I−(I)−23表〕に見られるように,東海道,山陽,東北,常磐,鹿児島等の各線区の大都市附近では片道で200回をこえ,中央線,京浜東北線,総武線等の通勤輸送区間では,片道で300回とうい無理な運転をしているところもある。また,単線区間においても,主要幹線の主要都市附近はすでに100回以上の列車回数となつているととろもみられる。


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