4 国鉄の輸送力増強


(1) 現状

  東京都および大阪府における人口の推移および国電輸送量の推移をみると、 〔I−(I)−34表〕に示すように,人口は全国平均を上回つて増加しており,さらに国電輸送人員,定期輸送人員は人口の伸びを上回つて激増している。また,37年度の首都圏(東京駅を中心に半径50キロ以内の地域)におげる輸送人員を交通機関別にみると,国鉄33%,私鉄24%,バス21%,路面電車・トロリーバス9%,地下鉄5%,ハイヤー・タクシー8%で,国鉄は依然として輸送の最大のにない手となつている。

(2) 対策

  国鉄においては,このように年々増大する通勤輸送需要に対処するため,第1次5カ年計画(32年度〜35年度)において298億円,第2次5カ年計画(36年度〜40年度)においては計画額777億円のうち38年度までに316億円を投入して,中央線中野・二鷹間の線増(工事中),大阪環状線の新設,山手線8両京都・西明石間7両運転など各線の電車編成両数の増大,運転時隔短縮,カナリヤ色の新性能電車の投入,新宿,天王寺など各駅の設備改良,武蔵小金井,森の宮など電車区の新増設,発送電変電設備の増強などを行なつて輸送力の増強に努めてきた。第2次5カ年計画中通勤輸送対策投資の進ちよく状況は, 〔I−(I)−35表〕のとおりである。

  また38年度の通勤電車の輸送力増強対策の実施状況は 〔I−(I)−36表〕のとおりである。

  このような輸送力増強対策にもかかわらず,通勤旅客の著しい増加のため,第2次5カ年計画の目標年次である40年度における輸送状況は,線区によつては依然として定員の2.8倍以上という混雑が予想されるので,大幅な混雑緩和のためには,さらに投資額を増加し45年ごろを目標としてつぎのような輸送増強対策を実施することが必要であると考えられる。
 (1) 増発の余力のある山手線,京浜東北線等の主要線区を10両編成2分10秒間隔運転とするほか,各線の編成両数増大と運転間隔の短縮を図る。
 (2) 増発の余力のない中央線中野・二鷹間を複々線化し,地下鉄5号線(中野〜新大手町〜東陽町)と中野で相互乗入れする工事(42年度完成予定)を行なうほか常磐線,総武線など行きづまりの予想される線区について複々線化を行なう。
 (3) 横浜線,南武線,片町線などの複線化,根岸線の延長など,線路の増設・新設を促進する。
  また,通勤旅客はラッシュ時間帯のしかも短時間に大量に殺到する傾向があるため,輸送力を確保し,混雑を緩和するためには,上記のような輸送力増強対策と併行して時差通勤に協力を求めることが重要である。このため国鉄では政府の指導のもとに各会社,学校,官庁等に対し時差通勤,通学の強力な実施を呼びかけ,38年度には 〔I−(I)−37表〕に示すように,東京附近で約41万人,大阪附近で約12万人の協力を得て,各線とも輸送の平均化に多大の効果を収めることができた。


表紙へ戻る 目次へ戻る 前へ戻る