2 輸送力増強の問題点とその対策
乗合バスに対する輸送需要は,前述のとおり急激に増加しており,今後,バス交通圏の拡大,バス依存地域の発展,輸送方向の多岐化等により,高速鉄道網が整備された後においても,なお増加し続けるものと思われる。したがつて路線バスは,都市交通における重要な公共輸送機関として,その輪送網を整備し,輸送力の増強を促進する必要がある。
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このように輸送力の増強が遅れているのは,自動車交通量の激増により,これと道路容量,広場容量との間に大きなアンバランスを生じたため,乗合バスの増回が差し止められる場合が多くなつていることが原因である。乗合パスの路線設定の免許および問題個所における増回については,都または府の公安委員会の意見を求めているが,委員会が,繁華街,駅前商店街,主要街路,駅前広場等について,交通渋滞,道路狭小,広場狭小等の理由で増回を不適当としている個所は,相当数に上つており,例えば東京都区部では,東京,新宿,中野,高円寺,阿佐ケ谷(北口),荻窪,西荻窪等25の駅について乗入回数が制限されている。このため,車両の大型化によつて増加する需要に対処する傾向がみられる(東京都区部における1両平均定員数は,昭和30年度56.6人,36年度63.7人)が,このことは,道路狭小部分における交通保安上の問題をさらに激化させている。
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また,年々激化する路面交通混雑は,前述のように乗合バスの輸送力増強を阻害しているのみならず,運行速度の低下,特にラッシュ時におけるダイヤの激しい乱れ等の影響を及ぼしている。このため乗合バスに対する
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乗合バスに対する輸送需要は年々増加しているにもかかわらず,その輸送力の増強は,銘面交通混雑等のため著しく遅れている。このような事態を解決するには,都市機能の分化等による輸送需要そのものの抑制,分散などの対策も考えられるが,当面,次のような対策が必要である。なお,これらの対策の多くは交通基本間題調査会,都市交通審議会等の答申の中でも指摘きれているところである。
(イ) バスターミナル施設の建設等
(ロ) 道路容量の増加等
道路の拡幅等の改良,交差点や踏切の立体化および道路率が低く,車両割限令抵触力所の多い外周部における道路の建設を行なう。 放射状および環状の道路網の建設整備を促進する。 駐車場,特に路外駐車場の設置を促進する。
(ハ) 道路の効率的使用
また,乗合バスは,1両当りの輸送効率がきわめて大きいが,全体の交通量の中に占める割合は微々たるものである。しかも,現在の路面交通混雑は,自家用自動車,なかでも自家用乗用車の激増によつてもたらざれているものであるから,自家用自動車,特に自家用乗用車に対する.交通制限,乗合バスその値の公共的輸送機関の優先通行の確保等の措置を実施し,個人的輸送機関による個別輸送を公共的輸送機関に集約する。
(ニ) 運行系統の合理化
特に(a)輸送における通勤輸送の最終需要地域の拡散傾向に応じた乗換え不要の運行系統および高速鉄道網による交通の流れと異る方向への運行系統を設定する。 環状的バス交通網としての(b)輸送を整備する。 なお,高速自動車道の利用による輸送力の増強,合理化は,一般の道路に下りてからの道路等の施設能力の増加が前提となる。 タクシー輸送力の増強と運行の合理化には,乗合バスの場合と同様,路面交通混雑の緩和も必要であるが,その他に次のような対策が必要である。
(イ) 運転者養成所の設置等により,積極的に運転者を養成する。
(ロ) タクシーベイの設置を促進し,かつ,流し営業を制限又は禁止することにより,路面交通混雑の緩和および車両の効率的運用を図る。
(ハ) 需要の地域曲集中に対応するため,用地を整備して駅構内専用タクシーの制度を普及させる。 |