2 OECDへの加盟との影響


(1) 加盟の経緯

  OECD(経済協力開発機構)への加盟は,38年からのわが国経済外交の大きな課題とされてきたが,これによってわが国は名実ともに先進国の一員となるとともに,地方工IMF(国際通貨基金)8条国への移行とあいまつて,わが国が開放経済体制に移行するものである。自由化が企業基盤の弱体なわが国海運業におよぼす影響は,ことに深刻であ,そのゆえにOECD加盟交渉においては,海運が最後まで最大の問題であった。38年3月,OECDが日本に加盟国の義務を受諾する用意があれば加盟の招請を行なうと発表して以来,OECDとの間に本格的な交渉が開始された。
  この交渉においてわが国は,外国船に対する長期用船の規制を向う5年間存続したいと要請したが,一部の海運国が強硬に反対したため,結局外国船の長期軍船規制を石油について2年間,石炭および鉄鉱石について1年間存続する案で妥協することとなった。その結果,OECDは,7月26日の理事会でわが国の加盟招請を全会一致で決定した。その後わが国は,国会の承認を得て,OECD条約を批准し,39年4月28日正式加盟が実現したのである。

(2) 加盟に伴う義務

  加盟に伴う義務としては,「経常的貿易外取引の自由化に度する規約」および「資本移動の自由化に関する規約」に基づく自国化義務が最も重要なものである。貿易外取引の自主化規約において,「海上運送」も自由化すべき項員に推定されているので,加盟国はとくに留保が認められない限り,海上運送に関連する取引および送金について,いかなる制限も加えることができない。このためにわが国は,38年11月,石油,石炭鉄鉱石以外の品目についての用船規制を廃止した。

(3) 加盟の影響とその対策

  戦争によって船腹の大半を失ない,戦時補償も打ち切られたまま急速に商船隊を拡大したわが国海運は,前述のように企業基礎の脆弱さと経営の不振に苦しんでいる。
  しかるに,OECDへの加盟により,外国船に対す長期用船規制を廃止することになった結果,国際競争力に優る外国船が本邦市場へ進出してくることが強く懸念されるに至った。かかる事態に対処するため,昨年9月18日,海運造船合理化審議会は運輸大臣に対し油送船および専用船の建造のための財政資金の融資比率を引上げることを建議した。この建議に基づいて,政府は,油送船および石炭,鉄鉱石専用船について,開銀の融資比率を8割とし開銀と市中銀行への返済期間の重複する期間について,開銀に対する返済額を調整し,船主の負担を軽減する措置をとることとした。
  この制度は,38年度より実施されたが,外国船の本邦への進出をくいとめるためには,海運企業の自立体制を早急に整備するとともに産業界,貿易業界など各界と海運界との協調体制を確立することが必要である。


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