1 観光航路の発展と生活航路の苦境国内の旅客航路事業は,昭和38年8月1日現在で,定期が820事業者1178航路不定期が549事業者741航路あり,その就航船舶は,定期と不定期をあわせて2966隻,15万6078総トンにおよんでいる。これらのあるものは,他の交通機関に恵まれない地域の住民にとって必要不可欠な生活の足であり,またあるものは,本州と四国九州,北海道を結ぶ幹線交通路であり,あるいは,観光ルートの一環をなすレジャー航路となっている。 これらのうちでも,観光客の比重の大きいいわゆる観光航路は,定期のうち240航路不定期のうち529航路と考えられ,方,離島や準離島地域と本土,あるいは離島相互間を結ぶいわゆる離島航路は,定期のうち661航路不定期のうち28航路と考えられる。過去1年間に,観光航路は51航路増加し,離島航路は23航路減少している。この傾向は,ここ数年来引き続いてみられるものであって,このため,観光航路が大部分を占める不定期航路は増加しているのに対し,定期航路は減少している。 定期航路による旅客輸送人員は,わずかずつではあるが毎年増加してきたが,38年には1億923万1020人と,前年より314万9151人(3%)の減少をみた。 これは,離島地域の人口の減少によって輸送需要そのものが停滞しているとともに,沿岸の道路整備の進捗や離島への架橋によって,陸上交通機関への旅客の転移が見られることによるものと思われる。しかし,一部の観光航路では,新型船の導入によって,陸上交通機関に対抗できる独自の輸送分野を形成しつつあり,また,自動車航送船は陸上交通との協調による新しい需要の開拓として,その発見が注目される。 一方,これらの航路の経営状態をみると,総トン数20トン以上の船舶を使用する定期航路の37年度の実績は,次のようになっている。 しかし,このうち黒字の航路は約4割にすぎず,残り約6割の航路が赤字という状態である。とりわけ,離島航路は,輸送需要の絶対数が少いのに安全上ある程度の大きさの船舶を必要とすることから,必然的にコスト高となり,一方,離島住民の生活水準が低いことから運賃負担カが弱く,宿命的な不採算航路となっている。 とりわけ,国庫補助金の交付対象となった27航路についてみると 〔II−(I)−24表〕のように,収入は費用の70%にすぎず,なかでも運航費用さえつぐなうことのできないものが,27航路中17航路に達している。
![]()
![]()
|