3 旅客航路の助成と企業基盤強化


(1) 離島航路の補助

  離島航路は,先に述べたように,その多くが性格的な不採算航路である。そこで,これを維持して離島住民の民生の安定と向上を図るため,国においては離島航路整備法に基づき毎年補助金を支出している。この離島航路補助金の対象となるのは,その維持がとくに必要な重要航路であって,38年度においては,24事業者の27航路に対し,補助金5025万円が支出されている。しかしながら,この27航路の欠損額は1億1842万円に達しているので,補助金は欠損額のわずか42.4%を補てんしているにすぎない。
  一方,都道府県又は市町村においても,それぞれ自主的に補助金を出しているところがあり,37年度には,14都道県から81事業者102航路に対し3383万円が,また,58市町村から75事業者81航路に対し1770万円が交付された。これらのうち約5分の1は,国庫補助金の交付されている航路に交付されたものであるが,これを合わせても,国庫補助航路の欠損額の約半額を補てんしたに止まっている。こうして,発生した欠損額の過半は,そのまま繰越欠損として残されているので,繰越欠損額は累積するばかりで,各事業者とも,経営の行づまりをきたしている。
  これら離島航路は,離島住民の零細な資本の出資で維持されている弱小会社か,または,離島町村の経営するものが大部分であって,住民の足を確保するためには,欠くことのできないものである。しかし,現在のような状態で推移すれば,ついには事業の継統が不可能となるおそれがあるので,この際,補助謝度の拡充のために,思い切った施策を講じることが必要である。それとともに,地方公共団体の補助金も,国庫補助と歩調を合わせて,拡大されることが望まれる。

 (2) 企業基盤の強化

  旅客航路のうち,経営の苦しいのは,離島航路ばかりではない。いわゆる観光航路の場合でも,他の交通機関に対抗するには,船舶の近代化に多額の資金を要し,また,近年における船員費の値上がわは,各航路の経営を圧迫している。零細な旅客航路事業者の場合には,従来は一般よりも低い船員費のために,かろうじて経営を維持することができてきたのであるが,今日ではこういった事情は大きく変りつつある。旅客航路事業者を経営主体別にみると,定期航路820業者のうち,会社が297,個人が398,地方公共団体が91,協同組合又は企業組合が48,その他の法人が6となっていて,約半数を値入事業者が占めている。会社組織のものでも,その半数は資本金100万円以下の零細企業で,いずれにしても,旅客航路事業者のほとんどが中小企業であるということができる。一事業者の経営規模も,航路数が平均1.5,保有船舶数が平均26隻と小さく,個人事業者のほとんどは保有船舶1隻にすぎない。こういった状態では,費用の増大に対して経営を合理化していくことも困難で,航路を近代化して他の交通機関に対抗することは,とうてい望めない。事実,最近さかんに開設されている水中翼船による航路には,従来の旅客航路事業者以外の陸上資本,とくに私鉄系資本の進出が目立っている。自動車航送船の導入についても,従来からの旅客航路事業者は遅れをとった。そこで,旅客航路事業者の経営基盤を強化するためには,零細事業者の合同を促進することにより,資本力を強め,重複の無駄を省いて合理化を促進することが望ましい。そのことは,また,利用者にとっても,全体的なサービスの向上となるのである。これには,旅客航路事業者自身の自覚と協調にまつところが大きいといえよう。


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