2 雇用


  遠洋漁業における労働条件は,他の漁業に比べて相対的に高く,企業に予予備員保有の能力のあるところから,船員雇用は周年雇用によって比較的安定しており,かつ労働条件がよいため比較的求人も容易である。近海漁業にあつても,経営の比較的安定している漁種にあつては,船員の定着性が強く,さして求人難を感じてはいない。しかし船型が大型化されるにしたがつて,また近海漁業から遠洋漁業への転換が年々増加しているところから,船舶職員の不足が目立ちはじめた。船舶職員法第20条は特定の場合,船舶職員の減免を指定することになっているが,38年度中指定をうけたものは2860件,4181名となっており,このうち804件,1760名が漁船である。
  また機関士の自然減耗は37年中は約11%で航海士は約9%であつた。商船の機関士約9%,航海士約8%に比べていずれも上回っているが,とくに機関士の退職が目立っている。
  一方部員についても,陸上産業に転ずるものは,37年度中商船の平均9%を上回る112%となつており,求人対策の必要に迫られている。
  漁船船員の雇用状況を船員職業紹介の実績でみるとつぎのようになっている。

  すなわち,求職は33年に比べ38年は1.2倍強になったが求人は1.5倍になっている「殺到率」も低下しており,求人難の状況を示している。
  このような雇用状況を反映し,従来地縁的色彩の濃厚であった雇用関係が後退し,地域的流動性が高まつてきており,海外漁業の国内基地港周辺には,地地域から職を求めて来るものもようやく多くなつた。


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