3 近代化を迫られる港湾運送事業


(1) 港湾運送事業の現状

  港湾荷役は労働力に対する依存度が高く,かつ作業内容が単純で,また船内荷役,沿岸荷役等各行為ごとに完結するため,人さえ集めれば容易に事業が開始でき,一方港湾貨物量はきわめて波動性が大きいため,事業の一部を下請関係に依存することも止むをえないという特質があって,このため港湾運送事業者は,その数が非常に多く,しかも中小企業者が圧倒的多数を占めている現状である。
  昭和38年8月31日現在主要な92港の事業者数は1502にのぼり,うち6大港では1014の多きを数えて一港平均200近い事業者数となっている。 〔II−(III)−25表〕は規模別に事業者数をみたものであるが,資木金500万円未満の事業者(個人経営のものを食む。)は全体の58%を占めており,一方資本金5000万円以上の事業者はわずか9%にすぎない状態である。
  しかしながら港湾運送におけるこうした状態は中小企業者の乱立による過当競争を招くことになり,これが港湾運送事業者の経営基盤を脆弱なものにし,最近の急速な労働者の確保施設の整備の要請に対処することを困難にしている。

(2) 事業の近代化

  このため港湾運送事業の近代化が強く望まれている。そのためには,1,2で述べたよろなもろもろの対策がすなわち事業の近代化につながるものであるが,この点でふれておかなければならないのは事業の免許制実施による適正規模化と過当競争の排除である。
  港湾運送事業は従来登録を受ければ自由に営業できたが,港湾運送事業法の改正により昭和34年10月1日からは免許制に移行し事業の免許を受けなげれば営業ができなくなった。これは事業者間の過当競争の排除と事業の適正規模化を目的としたものである。その際従来登録を受けていた既存港湾運送事業者については猶予措置が認められ,現在その免許切替が進行中である。
  免許切替審査に当つては,事業の種類に応じ一定量の上屋,野積場,荷役機械や労働者の保有が義務づけられており,そり適正規模化が図られている。
  この免許切替は39年一杯におおむね完了する見込みであり,新規免許の抑制方針とあいまつて事業の経営基盤の強化に役立つものと思われるが,港湾運送事業の現状その置かれている立場等からみて,その近代化,合理化をさらに一段と促進する必要があり,'事業者みずからの手による努力はもとより,国としての積極的な指導,助成や船会社,荷主等利用者側の協力も大いに望まれるところである。なお,総理府に設置された港湾労働等対策審議会が昭和39年3月3日内閣総理大臣に対して出した答申にも,将来の港湾運送事業の集約化,近代化の方向,港湾労働者の労働環境の改善とその確保策等についての見解が示されている。


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