2 世界造船業の動き
昭和32年以降,世界造船業の総進水量は年間800〜900万総トンで横ばいのまま推移してきた 〔〔II−(IV)−1図〕, 〔II−(IV)−6表〕。
38年度においても世界の総進水量は854万総トンと前年の838万総トンに比較して約2%の微増にとどまった。
このうち油送船の進水量は372万総トンで前年の300万総トンに比し24%と大幅増加をみた。船型別では3万総トン以上の油送船の増加が著しい 〔II−(IV)−7表〕。
さらに,このうちの輸出船進水量についてみると,38年は434万総トンと前年の345万総トンに比し26%の増加を示した 〔II−(IV)−6表〕。
各国別の進水量では,日本が237万総トンで依然首位をしめ,これに9O万総トン前後の西ドイツ,イギリス,スエーデンが,さらに40万総トン前後のイタリー,フランス,オランダ,ノルウェーが続き,過去数年の状況に比して大きな変化はみられなかった 〔II−(IV)−6表〕。
このうちの輸出船進水量についてみると,日本が150万総トンで首位をしめ,これに60万総トン前後の西ドイツ,スエーデンが,さらに20万総トン前後のその他各国が続いている。またほとんどの国では年々変動はあるにしても輸出船進水量がその国の進水量中大きな比率をしめており,これに依存するところの大きい点がうかがわれる 〔II−(IV)−6表〕。これら輸出国を仕向国別にみると各国それぞれ多岐にわたっている 〔II−(IV)−8表〕。
世界および各国の進水量の現状は上記のとおりであり,受注のための国際競争は年々激化の方である。このような状況を反映して,ここ数年来進水量の減退ないしは伸びなやみをきたしている国もあり,さらにその手持工事量も年々減少の一途をたどる国も多くみられる 〔II−(IV)−9表〕。
これらの現状から造船国の中には新造船工事量の不足や先行不安から自国造船業の危機を訴える国もみられる。さらに自国造船業の再編成をはかるため造船所の整理や労務者の他産業への転換を真剣にとりあげている国もあり,また一方においては船価に対する直接補助,間接税の減免,あるいは設備投資に対する税制優遇など造船助成を行なっている国もある。
最後に近年造船業において技術的分野のうけもつ役割が一段と強調されてきた点をみのがすことはできない。
すなわち現在世界の船主の等しく指向するところはきびしい海運不況下におけるより高い採算性の追求であり,これはまた反面造船技術の開発への要請でもある。さきに述べた専用船の増大や船型の大型化はもとより,近年著しく脚光を浴びてきた船舶の自動化などの傾向はその端的な現れである。このようなすう勢からみて今後造船業の優劣を決するのは技術的分野における努力に負うところが大きいといえよう。
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