2 日本造船業の現状
わが国造船業は鋼船造船業446社(大手造船業16社,その他中小型鋼船造新造船進水量推移
船業約430社)と木船造船業約1300社よりなり,その従業員数は鋼船造船業約15万人,木船造船業約2万人,38年度の進水量(木船造船業については,しゅん工量)は鋼船造船業248万総トン,木船造船業約5万総トンである 〔II−(IV)−12表〕。
大手企業と中小企業との間に大きな企業格差のあるのはいずれの産業についてもいえることであるが,造船業においても,大手造船業は年間総進水量の89%とその大半を占めている。
また近年海運界の要請により船型の大型化が顕著となり,これに則応して大手造船業は多額の設備投資を行ない,大型船建造態勢の整備,建造法の合理化を図っている。一方中小型鋼船造船業および大船造船業は旧態依然たる経営形態のものが多く,近代化,合理化は著しく遅れているといえよう。
つぎに新造船受注量および工事量の推移と現状について概観してみよう。
わが国造船業の新造船受注状況の推移をみると,31年をピークにその後年々減少し,34年度はわずかに95万1000総トンと29年以前の水準まで低落した。その後日本経済の急速な成長に伴う船腹需要の増大や,わが国造船業の輸出努力が実を結んで,受注量は35年度177万総トン,36年度206万総トンと急速に回復していった。さらに37年度においては国力船受注量は減少したが,輸出船受注量が急増したため国内船,輸出船合計では231万総トンの受注量を記録した。
さらに38年度についてみると,37年度に引き続き輪出船受注が好調であり,また国内船受注も順調だつたため,輸出船,国内船合計で541万総トンと戦後最高の受注量となった 〔II−(IV)−13表〕。
つぎに,新造船建造実績を進水量についてみると,大手造船業(ただし,そのうち建造能力6500総トン未満の造船所を除く。)の進水量は30年度,31年度の大量受注により32年度203万総トンとピークに達したが,その後は受注量の減少と軌を一にして進水量も減少を続けた。
しかし,35年度より上向いた受注量に応じて進水量も上昇に転じ,37年度は198万総トンを記録した。その後も引き続き進水量は増加傾向をたどり,38年度は252万総トンと32年度をしのぐ進水実績をあげた。この38年度の進水量を国内船,輸出船別にみると,国内船にあっては37年度の101万総トンに対し85万総トンとやや減少しているとはいえ,計画造船の建造枠が大幅に増大したことなどもあって,37年度に次ぐ史上2番目の記録であった。一方輸出船の進水量は37年度より増大した受注量に応じて168万総トンとわが国造船業始まって以来の大量の進水実績をあげた 〔II−(IV)−14表〕。
また39年度の進水は,国内船についてはわが国の国際収支を改善するため,大量の外航船腹が建造される見込みであること,また輸出船にあっては最近の好調な受注により相当量の手持工事量が確保できたことなどのために38年度をさらに上回ることが予測ざれる。
つぎに大手造船業16社のうち10社の売上状況についてみると,新造船部門の売上高は33年以降横ばいで,700〜800億円の間で推移している。
修繕船部門の売上高は年々着実に増加し,38年上期には174億円と,33年同期のほぼ2倍となった。しかも33年当時は新造船部門の売上高の10%にも満たなかったが,38年には20%を越える売上をあげ,その比重は高まっている。これは船腹量の増加および改造工事の活況などにより修繕船関係の工事が増大したためと考えられる。
一方陸上工事関係については,造船業の熱心な陸上部門へり進出意欲により売上は年々順調に増加している。33,34年には新造船部門,陸上工事部門の売上高はほぼ同額であったが,38年上期においては陸上部門は新造船部門の約2.4倍の売上高をあげるに至った。
つぎに資本構成の推移をみると,他人資本特に固定負債の増加が著しく,38年上期には23%と33年同期の118%に比べ2倍近くなった。これに反し,流動負債は33年、上期の62.7%から38年同期の55%に,自己資本は33年上期の25.5%から38年上期の22%にそれぞれ減少したのが目立っている。
大手造船業以外の中小型鋼船造船業の工事量についてみると,36年度のしゆん工量は約39万総トンをピークにして,37年度しゆん工量は30万総トンに減少した。38年度においても進水量は30万総トンと37年度の横ばいの規模で推移した 〔II−(IV)−15表〕。
最近の輸出船進水量は1万総トン前後であり,輪出船依存度はきわめて低い。このためこの種造船業の好不況は国内景気の動向に大きく左右される。
輸出市場としては東南アジアが主で,曳船,バージなどの特殊船が大部分をしめる。
つぎに木造船業の建造量についてみると,34年度から37年度までのしゆん工量は年間約8万総トンと横ばい状態であったが,38年度の建造費は5万総トンに急減した。
また木船の輸出額は年間150万ドル程度で,漁船,ランチ,プレジヤーボートがその主なものである。漁船,ランチなどは東南アジア市場へ,プレジャーボートは米国向けである。
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