1 建造技術の進歩
わが国の造船業が戦後の低迷を脱し,世界に誇る造船業に成長したのは,建造技術の進歩によるところがきわめて大きい。たとえば,電気溶接技術の向上による溶接の全面的採用とそれに伴うブロック建造方式の進歩は,工期の短縮,材料および工数の節減をもたらし,クレーンなど運搬設備の大型合理化と相まって大型船の建造については他国の造船業をリードするに至った。この間電子工学の進歩に伴う高速自動切断機,自動溶接機の大幅採用などは鋼材加工能力を飛躍的に向上させ,さらに設計や工程管理方式の近代化は,大型ブロック,先行ぎ装の採用を生むなど建造技術の進歩は画期的なものがある。このほか建造工程における品質管理,加工精度の向上などは,使用鋼材の節減船価の低減,ひいては労働生産性の向上に注目すべき効果を現わしている。これら技術の進歩を実船でみると,14次計画造船(33年度)と18次計画造船(37年度)の5万重量トン油送船について比較した場合,鋼材使用量は約20%減,また工数は約25〜30%減となっており,建造技術
の進歩の成果はきわめて顕著である。しかしながら世界一の造船量を誇るわが国造船業が将来とも優位を維持するには,なおいっそうの技術開発がすすめられなければならない。たとえば,新しい船型と構造に関する研究をはじめ,電子工業の応用による設計,工作,工程などの大幅な合理化,工作技術(溶接,切断)の研究,運搬設備の自動化機械化,ぎ装の合理化などについて格段の努力を傾注しなければならない。
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