5 将来の管制方式


  以上のように,航空機の進歩と航空交通の複雑化に対応して,空域の最大利用の見地から,航空交通管制の方式は今日まで次第に改善されてきたが,ここではさらに将来の管制方式改善の動向について述べてみたい。

(1) Positive ControlとExtended Control

  Positive Controlとは,気象状態のいかんに拘らず,特定の空域に限つて,有視界飛行方式による飛行を禁止する方式である。これは,航空交通の増大及び高速化に伴いパイロットの目視による衝突防止はますます困難となり,特に高速機の飛行する空域および交通の輻輳するターミナル空域等においては,有視界飛行方式による航行について問題が生じてきているので,これらの空域についてば計器飛行方式による飛行のみを認め,航空機関には計器飛行管制基準に基づく間隔を設定しようとする方式であつて,特に繁忙な空港の周辺,主要航空路,高高度空域更に将来は超音速機り飛行する空域等が対象となるであろう。
  Extended Contro1とは,従来,有視界飛行方式によつて飛行する航空機は,空港周辺以外の空域を飛行するものについては航空交通管制の対象としていなかつたのを,空港周辺以外の空域をも管制の対象とする方式であつて,有視界飛行方式による航空機を効果的に管制して,計器飛行方式による航空機との間の,また,有視界飛行方式による航空機相互間の衝突防止と運航の促進を図ろうとするものである。有視界飛行方式による航空機りための入港,出港経路の指定,目視点による位置通報などの方式によつて,次第に広い範囲の空域が有視界飛行管制の対象となつてくるであろう。

(2) Area Type Control

  ICAOの規定によれば,航空路は,帯状の管制区と定義されているが,これは地形,無線航行援助施設,気象条件等が考慮されて設定される通常10カイリの幅をもつた空中の通路である。したがつて地形や気象の問題がなく,無線航行援助施設が備わり,管制業務が行なわれうる態勢にあるならば,できるだけ広い空域を管制空域として指定し,航空機の計器飛行方式による最短飛行を可能とすべきは当然である。これをArea Type Controlと呼び従来の航空路管制(Ainway Type Control)と区別される。前述の高高度管制はArea Type Controlの一環をなすものであるが,この方式における上層管制区は7,300メートル以上の空域に限られている。将来はこの下限が次第に低高度へ下げられていくであろう。また下層の空域にあつても,現在すでにターミナル空港にあつてはArea Typeの管制が実施されており,将来はこの範囲が拡大されることとなろう。
  Area Type Controlは従来のairway Type controlに比して安全間隔の基準などが非常に複雑になり管制機関の負担は大となるが,レーダーの設置,無線航行援助施設の改善,さらには管制業務の自動化などにより,その負担を少しずつでも軽くすべきであろう。

(3) 航空交通管制機関の自動化

  航空交通の増大と高速化,多様化に対処して航空交通管制業務の迅速性,的確性を確保するため,現在,電子計算機の導入による管制機関の自動化計画が進められている。
  管制業務の自動化については,米国,英国,フランス,ドイツ等では早くから実験を始め,すでに一部実用化の段階に入つている。
  わが国においては,昭和37年1月管制自動化研究会が設置され,同年8月,運輸大臣に基本方針が答申された。この答申によれば,全計画を3段階に分けて実施することが提案されている。
  第1段階においては,管制業務の現状の調査分析に基づいて管制本部の自動化をする。この段階にあつては,計算機の使用による飛行データーの処理(飛行計画に基づいて飛行時間,通過,到着予定時間を算出すること,飛行時間のずれ等の情報に基づいて,通過,到着予定時間を更新すること)のほか,計算機により航空機の異常接近を探査することが考えられている。これらの計算結果を管制官に示すための表示の仕方としては,プリンターによるストリップ(運航票)の印刷やブラウン管指示形式(CRT形式)等が考えられている。
  第2段階においては,管制本部の自動化システムの高度化(レーダーの情報の処理),ターミナル管制自動化(進入順位の計算,レーダー情報の処理等),自動化受信装置(地対地地対空)の開発が,第3段階では,レーダーと計算機との連けいを含む全管制機関の綜合的な自動化を図ることが考えられている。
  なお,この自動化計画は昭和38年から昭和48年までに実施することが勧告されている。


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