1 外客の来訪状況


  昭和38年の来訪外客数は 〔IV−7表〕にみられるように前年の10%増に当る30万5500人である。この来訪外客数を入国目的別に観光客,商用その他客,一時上陸客と分けてみると,それぞれ15万8200人,8万1400人,6万5900人となつており,また,これら目的別来訪外客数を前年のそれと比べてみると,それぞれ11%増,13%増,5%増となつている。しかし,わが国への来訪外客数が,34年から36年までの3年間は,対前年比で17%〜20%の増加率を示していたことから考えると,37年(対前年12%増),38年は若干伸び率が鈍化している。
  来訪外客を国別にみた場合,主要国のうちで最も増加率の鈍化の目立つのはアメリカからの来訪客である。すなわち,昭和34〜36年までの3年間は平均19%の増加率を示していたアメリカ人が,37年は12%,38年も約12%の増加率にとどまつた。訪日アメリカ人を目的別にみたのが 〔IV−8表〕であるが,この表から明らかなように昭和37年,38年は観光客の伸びが著しく鈍化しており,これが,来訪アメリカ人全体の伸び率の鈍化となつてあらわれており,ひいては,来訪外客全体の伸び率の鈍化となつてあらわれているのである。
  しかし一方では,先にも述べたようにヨーロッパを訪れたアメリカ人は,1962年は対前年12%増と増大しており,太平洋・アジア地域と競争関係にあるヨーロッパ地域の対米観光政策の成功は注目すべきものがある。
  このように昭和37年,38年の来訪外客数の伸びが多少鈍化したことは,観光渡航が自由化されたこととあいまつて,今後,来訪外客の増加を図るため,海外観光宣伝の面において,国際交通機関の整備等の面において,出入国手続きの面において,さらに,受け入れ体制の面において,その改善と充実のためいつそうの努力がなされなければならないことを告げているものといえる。

  以上述べたように,わが国への来訪外客数の増加傾向は,やや微妙な動きをみせているが,昭和37年の来訪外客数を地域別にみると,アメリカからのものが54%,太平洋・アジア地域からのものが,27.2%,ヨーロッパ地域からのものが16.8%を占めている。すなわち,わが国の国際観光にとつて,アメリカは依然として最大の市場であり,その重要性はきわめて大きいものといわなければならない。反面アメリカとともに世界の一大観光客送り出し市場であるヨーロッパからの来訪外客がその対前年の伸び率は大きいが,まだ絶対数において少なく,今後のわが国の観光政策上,ヨーロッパ市場の開発に力をそそぐ必要のあることを示しているものといえよう。また,太平洋・アジア地域は,地理的に近いのであるから,経済的地位の向上,相互関係の緊密化等により,今後,観光客送り出し市場としての役割を十分期待できるはずであり,これら地域の重要性も決して失なわれないものと思われる。

  次に,これらの外客の来訪時期についてみると,3月から11月まで長期にわたつてシーズンが続き,4月と10月がピークになつていること,12月から2月にかけての冬期には著しいボトムがあることに特徴がある。このような傾向は,観光客に特に著しくあらわれている。
  さらに,来訪外客の滞在日数についてみると,これらを滞在期間180日以内の者に限れば 〔IV−9表〕にみられるように観光客,一時上陸客についてはほとんど変動していないが,商用その他客の滞在日数は,前年に比して,若干の伸長を示したものの数年間の大勢としては低滅傾向を示してきている。これは,社会活動のスピード化,交通機関の発達,比較的低所得に属ずる人々の旅行の増加などによるものと思われる。

  次に,昭和38年4月から12月までにわが国を訪れた外客を職業別にみたのが 〔IV−10表〕である。

  一番多いのが主婦であり,次いで商工業従事者,技術者の順になつている。無職が1割を占めているが,その大部分は老人であると思われる。また学生も1割弱と相当多いのが注目される。
  また,わが国の来訪外客の消費額は昭和38年には1億9000万ドルに及ぶものと推定されている。観光収入は外貨手取率の高いものであり,この増加を図ることは,わが国の国際収支の改善にはきわめて効果的な方法ということができる。


表紙へ戻る 次へ進む