2 国際旅客輸送に関する現況と問題点


  海外観光宣伝により,わが国への観光旅行の意欲を持つた外客が,実際にわが国へ来訪するには,国際交通機関を利用しなければならない。したがつて,それが十分整備されていなければ,わが国への来訪が事実上不可能となる場合もあろうし,いつたんいだいた旅行意欲を失う場合もあろう,したがつて快適な国際旅客輸送力が十分確保ざれ,外客来訪上の障害とならないように措置することが,外客誘致上重要な問題となるのである。
  外客がわが国へ来訪するための国際交通機関としては,航空機と船舶がある。昭和28年までは 〔IV−14図〕にみられるように,船舶の利用客の方が大であつたが,昭和29年以来その地位は逆転し,ここ数年来訪外客の増加分の多くは航空機利者の増加によつている。しかし,船舶利用客もその絶対数は,昭和29年から32年まで一時停滞をみたものの,33年以降再び毎年10%程度の増加を続けており,特にその利用客にはいわゆるデラックスな旅行を行なつている者が多いという点を考慮に入れるならば,国際観光振興上その重要性は決して航空機に劣るものではない。
  されわが国を中心とする国際交通機関の輸送力の現況についてみるならば,まず国際航空の輪送力は,航空機の乗り入れの便数の増加,ジェット化の進展等により,ここ数年の間に著しく強化された。
  輸送力の点についてはかなり余裕をもつて確保されているということができる。
  次に,外客を誘致するためには,十分な輸送力とともに,低れんな運賃が確保されることが望ましい。特に,このことは,外客の対象を欧米諸国に依存しているわが国にとつて,これら欧米諸国からの距離がきわめて遠いところにあることを考えるときわめて重要な点といえよう。

  しかるに,航空運賃は,国際航空運送協会(IATA)の協定で規制されており,チャーター料金以外は自由に安くすることができない建前となつているが,その協定された料金についてみると,アメリカの観光客をめぐつてわが国と競争関係にあるヨーロッパ諸国とアメリカを結ぶ大西洋線については,そもそもキロ当り運賃が太平洋線より安い上に団体割引の種類についても太平洋線より細かい学生割引,家族割引等の各種割引がある。このため,もともとヨーロッパに比べて距離的に遠いわが国は運賃の面で,いつそう不利な立場におかれており,アメリカの観光客をわが国へ誘致するに当たつて,一つの障害となつている。
  次に国際輸送力の問題に照応する,それらの輸送機関受け入れ施設問題であるが,空港については,現在昭和32年以来東京国際空港の,また33年以来,大阪国際空港の整備が進められている。しかし,このような整備が行なわれても,なお,将来の需要増には対処しきれず,また,超高速機の出現も予想されるので,別に新東京国際空港の建設が計画され,現在調査がなされているが,これが国際観光の発展に与える影響はきわめて大きく,その整備が遅れたために,国際観光の発展上の障害となるような事態を招かないようにしなければならない。また海港についても,今後における海上輸送力の増加を考えると,その受け入れ体制は必ずしも十分なものとはいえず,今後の増強が期待される。


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