1 外客接遇網の概況


  外客のために旅行に関するサービスを提供する機関はきわめて広範囲にわたるが,それらのうちでもホテル,外客向旅館ユースホテル等の外客向の宿泊機関,外客向レストラン,両替施設,国際観光振興会の総合観光案内所,案内地図板等の案内機関,レストハウスとよばれる休憩施設等の主としてその施設の利用を外客に供することを事業の内容とする機関および一般旅行あつ旋業,ガイド,外客向みやげ品店,産業観光やホームビジットシステムの受け入れ機関等のような役務や商品を主として外客に提供することを事業の内容とする機関は,各機関の側からみれば,その提供する自己の施設,役務あるいは商品が主として外客を対象とするものであり,外客の側からみても,交通機関とともに,最も関係の深い利用機関であるということができる。したがつて,外客に快適な旅行をさせるためには,これら機関の提供する施設,役務および商品の質および量の向上を図ることが必要であることはもち論であるが,それとともに,外客がこれら機関を有機的に,かつ,簡便に利用することができるようこれら機関相互間の連けいの緊密化を図ることも必要である。
  このようなところから,国の立場からは,後に述べるように,国際観光振興会法,国際観光ホテル整備法,旅行あつ旋業法及び通訳案内業法の法律群による規制および助成,各種行政指導,政府出資,地方公共団体に対する補助金の交付,融資のあつ旋等が行なわれている。一方それぞれの機関の事業者も,自主的に企業内訓練による従業員の会話能力,接客技術等の向上,店内各種施設の改良等の施設の整備,インフオメーション体制の整備,他の事業者との連けいの緊密化等,外客接遇の向上のための努力を行なつている。また,さらに,これらの事業者は,ホテルについては社団法人日本ホテル協会を,外客向旅館については社団法人国際観光旅館連盟を,外客向レストランについては社団法人国際観光日本レストラン協会を,一般旅行あつ旋業者については社団法人国際旅行業者協会を,ガイドについては社団法人日本観光通訳協会を,外客向みやげ品店については社団法人国際観光土産品協会をそれぞれ組織して,各種の外客に対する宣伝,さん下事業者に対する外客接遇技術の啓蒙,講習及び情報の提供等の活動を活発に行なつている。
  また,これらの各事業団体は,交通機関をも含めて外客接遇向止のための相互間の連けいの強化を図る必要上,いわば外客接遇の第一線業務を分担する一般旅行あつ旋業の国際旅行業者協会,ガイドの日本観光通訳協会および同様の役割を果たす国際観光振興会の総合観光案内所を中心に,その相互間の情報交換,協調等を行ない,いわば基幹的な外客接遇網を形成している。
  次に,外客接遇網を構成する個々の機関についてその施設を利用させることを主たる事業の内容とするものと,役務又は商品の提供を主たる事業内容とするものに分け,その現況と問題点を述べる。


表紙へ戻る 次へ進む