3 地域経済と貨物輸送
(1) 貨物の地域流動構造
比較的経済関係の深い都道府県を1経済ブロックとして 〔1−1−9表〕のように全国を15地域に区分し,35年度の地域内輸送量(地域内の相互発着輸送量),地域間輸送量(地域間相互発着輸送量)を37年度の地域内,地域間輸送量とを比較すると〔1-1-10,11図〕に示すとおり,北関東から3大工業地帯を経由して北九州にいたる太平洋岸ベルト地帯の地域内,地域間輸送量の伸びは他の地域の地域内,地域間輸送量の伸びと比較して必ずしも高いとはいえないが,これらの太平洋岸ベルト地帯の輸送需要集中度は依然として高い。
地域内輸送における輸送機関別分担率の時系列変化を15地域平均でみると,〔1-1-12の(1)図〕に示すとおり,鉄道輸送のシェアを自動車が侵蝕し,37年度は自動車輸送が90%あまりを占めている。地域内輸送における輸送機関別分担率は地域によつて差異があり,37年度でみると内航海運の占める地位が,裏東北,北関東,近畿は0.5%以下であるのに対し,山陽,四国,南九州,北九州は6%ないし10%を占めている。北海道,北九州は,鉄道の占める地位が高くそれぞれ23%および15%であるのに対し,自動車の占める地位はそれぞれ76%および79%と平均より低い。
地域間輸送における輸送機関別分担率変化の推移を15地域平均でみると〔1-1-12の(2)図〕に示すとおり,鉄道輸送のシェアは減少したのに対し,自動車,内航海運のシェアは増加している。地域間輸送の輸送機関別シェアは地域内輸送と同様に地域によつて異なるが,37年度調査でみると,内航海運の比率の高い地域は,北海道,山陽,四国,北九州で,70%ないし90%を,鉄道輸送の比率が高い地域は裏東北,北陸,山陰で60%ないし80%を,自動車輸送の占める比率が高い地域は,北関東,近畿で50%ないし60%をそれぞれ占めている。
品目毎の輸送分担率は,地域内輸送では各品目とも自動車が過半数を占め,自動車の短距離輸送機関としての優位性を示しているが,地域間輸送では石油,石炭,セメントが50%ないし80%を海運に依存しており,穀物については76%が鉄道に依存しているのに対し,砂利,砂,石材の鉄道依存率は10%に満たず,60%近くを自動車に依存している。
貨物の流動面から地域の依存関係を分析するため,地域別に発着総輸送量に対するその地域内発着輸送量とその地域と他の各地域との相互発着輸送量との割合を計算し,地域相互の連帯関係をみると 〔1−1−13表〕のとおりで,北海道,南関東,東海の3経済ブロックは地域内発着輸送量が80%以上を占め,他地域依存度は低い。他地域依存度の高い地域は北関東,近畿,阪神,山陽,四国で,地域外依存度は35%ないし40%を占めている。
(2) 大都市地域における貨物輸送
東京,大阪,名古屋をそれぞれ中心とする南関東,阪神,東海の経済ブロックについて貨物の流出入および地域内流動を37年度調査でみると 〔1−1−14図〕のとおり,他の地域のそれと比較して著しく大きいことがわかる。
これらの地域の特徴は,国内における主要工業地帯であるため,多量の原料および消費資材の到着輸送と生産品の発輸送が行なわれており,発送貨物の数量に対比して到着貨物の数量が大きいことである。
これらの三大都市地域の移出入貨物が、いかなる地域から移出入しているかをその割合でみると 〔1−1−15表〕のとおりであり,大都市地域と他の経済ブロックとの物の動きがわかる。とくに東海の発送貨物のうち38%を南関東に発送し,また,阪神の発送貨物のうち33%を近畿に発送していることが注目される。三大都市地域は,前節で述べた太平洋岸ベルト地帯のなかでもとくに貨物輸送量の集中地域であるが,これらの三大都市地域のなかでも最も輸送量の流れが集中する地区は都心部である。東京都に例をとつて路線トラック貨物の発着輸送量をみると,都心3区(中央,千代田,港)およびこれに隣接する3区(江東,墨田,台東)で東京都内に発着する路線トラック貨物輸送量の60%あまりを占めており,また国鉄についても上記6区内に所在する貨物駅の発着トン数は,都内貨物駅の発着トン数の3分の2を占めている。内航海運についても,南関東を後背地に持つ,東京,川崎,横浜,千葉の4港の移出入貨物トン数は,全国港湾の総移出入貨物トン数の16%を占めている。
(3) 地方都市における貨物の流出入
地方都市における貨物の流出入は,地方都市の性格により異なつた動きを示す。そこで本項では,通常用いられている「産業別就業人口構成」により都市の性格を分類し,貨物の流出入状況をみることにする。
第1次産業就業人口のウエイトの高い都市として,豊橋,山形,鳥取,松江,山口,第2次産業就業人口のウエイトの高い都市として姫路,呉,大牟田,第3次産業就業人口のウエイトの高い都市として福岡,札幌,仙台,熊本・盛岡の各都市について貨物の流動係数を算出したところ 〔1−1−16表〕のような結果を得た。
これを上記の都市を含む主要45地方都市の貨物流動係数の平均 〔1−1−17表〕と比較すると,第1次産業就業人口のウエイトの高い都市は,人口当り流出入量,人口当り市内流動とも低いのに対し,第2次産業就業人口のウエイトの高い都市は,人口当り流出入量が著しく高く,人口当り市内流動はかなり低く対外依存的であるのが特徴である。
第3次産業就業人口の高い都市は,人口当り市内流動が高い。第3次産業就業人口の高い都市は,消費財輸送が多く,消費財輸送は平均輸送距離が短くおもに市内流動であるから,人口当り市内流動の係数が高くでている。
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