3 観光関係国際収支の動向


(1) 世界における国際観光の動向

  近年,世界の国際観光は年々活発になつている。IUOTO(官設観光機関国際同盟)資料によつて,1962〜64年における国際観光の動きをみると,観光客数は8,166万人から1億570万人へと年をおつて増加しており,1964年には対前年比16%の増加となつている。また観光収入も80億1,500万ドルから102億3,000万ドルヘと毎年10%を若干上回る増加率を示している。
  1963年における主要国の旅行収支をみると 〔1−3−4図〕に示すように,米国,西独が大幅な赤字,イタリア,スペイン,オーストリア,スイスが大幅な黒字となつているのが注目される。

  西欧諸国の旅行収支は西独,英国を除いて大幅な黒字となつているが,これはもともと国内に豊富な観光資源がある上に,外客誘致のため,入国査証の廃止,旅券の廃止,入出国手続,通関手続の簡素化,強力な海外観光宣伝,とくに対米共同宣伝など積極的な国際観光施策を行なつていることによる。
  米国は,旅行収支において毎年大幅な赤字を出しており,ドル防衛の見地から,積極的な観光施策を打ち出しているが,依然赤字基調は改善されていない。

(2) わが国国際観光の動向

  昭和39年の来訪外客数は 〔1−3−5表〕に示すとおり,総計35万3,000人で対前年比16%の増加であつた。39年は,いうまでもなく,オリンピック東京大会が開催された年であつて,大会関係者はもちろんのこと,一般観光客も含めて来訪外客が相当ふえるものと予想されていたが,やや期待はずれの結果に終つている。この原因は,毎年観光客が最も多い10月にオリンピックが開かれたため,一般の観光客がむしろこの時期を避けて来訪時期を延ばしたことにあると考えられる。来訪外客の内訳けは,滞在客が,観光客18万1,998人,商用客2万8,331人,その他客7万4,193人,合計28万4,522人で,一時上陸客が6万8,309人であつた。その他客のうちには,IDカードによる入国者,なすわち,オリンピック大会に参加の選手,役職員,報道員等9,199人が含まれており,対前年比31%と最も増加が大きい。なお,法務省の調べによるとオリンピック東京大会の関係者および観客は,合計5万622人であつて,当初の予想約10万人を大きく下回つている。
  以上のように,,オリンピック東京大会の開催は,来訪外客数において期待はずれの感があつたが,オリンピック開催を機会に日本の実情が広く世界に紹介されたことは,わが国国際観光の将来に大きなプラスとなるものと考えられる。また,オリンピック開催を契機として,ホテルの整備,ガイドの拡充等外客受入体制が拡充されたこと,観光関係者のみならず,一般国民にも友好的な外客接遇精神が形成されたことも,今後におけるわが国国際観光の発展に寄与することになろう。

  つぎに,39年の旅行関係国際収支(IMF方式)をみると, 〔1−3−6表〕に示すように,まず受取りは,39年6,198万ドルで対前年比16%増となつているが,39年4月1日,実施された海外渡航の自由化(1人1年1回500ドルの範囲内)に伴い,出国日本人数が急速にふえており,39年12万8,487人(沖縄を含まない)と対前年比28%増となつたため,旅行収支の支払いは7,814万ドル,対前年比1.9%増と受取りの伸び率を上回つた。この結果,収支尻は1,616万ドルの赤字で前年よりも赤字幅が拡大している。
  このようなわが国旅行収支の赤字を解消し,わが国国際観光の発展を図るためには,わが国としてはさらに一層国際観光施策を充実強化する必要があろう。
  国際観光振興のための施策としては,(イ)海外観光宣伝の強化,(ロ)出入国に関する措置の改善,(ハ)外客受入施設の整備,(ニ)外客接遇の向上,があげられるが,(ハ)については第4章第5節でふれることとして,ここでは(イ),(ロ)および(ニ)について述べることとする。
  まず,外客誘致にあたつて重要な役割を果たす海外観光宣伝については,世界の主要都市に配置された国際観光振興会の海外宣伝網によつて積極的に実施している。海外観光宣伝事務所は39年度に新たにジュネーブに設置されたが,40年度にはさらにメキシコシティに開設される予定で,これらも含めて15ヵ所,また,宣伝嘱託員は15ヵ所に配置されている。

  このほか,国際会議,行事を誘致するため,40年6月に,日本コンベンション・ビューローが設立された。
  つぎに,出入国措置の簡素化については,査証および査証料の相互免除協定を25ヵ国との間に結んでいること,通関手続きについて簡易措置を講じていることなどがあげられる。
  さらに,来訪外客の接遇の向上を図るため,旅行あつ旋および通訳案内を充実強化するとともに,外客に対して,みやげ品の物品税免除,運賃割引などの優遇措置を講じている。また,オリンピック開催時にはオリンピック観光客輸送対策連絡会議を中心に,外客および競技用器材の輸送にとくに便宜を図つた。このほか,来訪する外客に対してわが国の産業,文化,家庭生活を紹介する,いわゆる産業観光,ホーム・ビジットの重要性が認識されてきている現状にかんがみ,積極的に受入れ体制の整備を図つている。


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