1 鉄道輸送施設


  第2次5カ年計画の4年目にあたつた国鉄では,2,528億円の投資規模をもつて東海道新幹線をはじめとする施設の拡充が進められた。投資規模が対前年度比90.4%と減少したのは,昭和38年度の設備投資額の5割以上を占めていた東海道新幹線の工事費1,478億円が,39年度には645億円,対前年度比44%に縮小したためである。一方,線路増設等の幹線輸送関係(新幹線を除く)への投資は,対前年度比64%増と大きな伸びをみせており,また,通勤輸送関係への投資も対前年度比17%の増加であり,34年度以来毎年投資の大きな部分を占めた新幹線の工事が完成し,他の幹線の線増等に工事の重点が移つた年であつた。
  この投資の結果,新幹線が39年10月から開業し,37年当時すでに全線にわたつて列車回数が適正な線路容量を越えるにいたつていた東海道本線の混雑緩和に大きな貢献をした。また,38年度末15%であつた複線化率は15.5%へ,電化率は同じく17%から18.6%へと上昇し,車両の面では,通勤輸送対策としての車両増備,貨車の増備等が進められたが,第2次5カ年計画全体の進ちよく率は39年度末で70%と低く,なかでも電化・電車化の遅れが目立つている。
  国鉄の新線建設は日本鉄道建設公団が行なつているが,39年度の投資規模は,77億円であつて,根岸線(桜木町・磯子間)等の6線,総延長98.5キロの工事が完了,開業した。
  これらの施設整備の結晶である輸送力を示す貨車キロ,客車キロは,それぞれ前年度に引きつづき増加し,その結果,景気停滞等の影響で出貨が前年度に対し横ばいだつたこともあつて,貨物輸送で毎年問題となつている駅頭滞貨は一時減少した。しかし,貨車数の増加に見合う操車場の増強が遅れているため,各操車場とも取扱能力を越えた作業を余儀なくされている。一方,旅客輸送の面では,平均乗車効率100%に近い混雑であつた東海道本線が新幹線の完成により混雑が緩和されたのみで,主要線区の準急以上の乗車効率は,39年4月の88.7%から40年4月の91.0%へ上昇しており,また,大都市の通勤・通学輸送についても車両増備,時差出勤などの努力にもかかわらず,定員の3倍前後の混雑ぶりを示す線区も多く,輸送力は依然として大きく不足している状態にある。
  東京,大阪などの大都市では人口の増大に伴う通勤・通学者の激増をさばく都市交通機関として,私鉄の役割は年々大きくなつている。
  大手私鉄については36年度に始まつた輸送力増強計画により38年度までに1,270億円の投資が行なわれたが,引きつづき39年度から総額2,246億円の投資規模をもつ輸送力増強計画に入つている。地下高速鉄道に対する投資も,増大の傾向にあり,帝都高速度交通営団,東京都,名古屋市および大阪市により総額594億円,対前年度比18.8%増の投資が行なわれ,延長キロ数も対前年度末比16.1%の伸びで111.2キロとなつた。
  39年度の私鉄の客車キロは対前年度比6.1%増の伸びをみせたが,一方,輸送人キロも3.9%の増加で,混雑は緩和されていない。


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