2 収益性の動向


  まず,収益性の動向を示す重要な指標である総資本利益率(純利益率÷総資本)についてみると 〔1−5−3表〕に示すように,全産業,製造業とも景気後退により低下しており,39年度下期においてはそれぞれ3.7%,4.3%となつているが,経済動向を敏感に反映する運輸各事業においても,外航海運,航空など一部業種を除き,表から明らかなとおり総資本利益率が低下しており,収益性の悪化がみられる。

  総資本利益率を全産業,製造業と比較してみると,運輸事業は一般に低く,国鉄,大手私鉄および営団,中小私鉄,公営鉄道,乗合バス,外航海運業,内航海運業のように赤字ないしそれに近い低い利益率を示す業種が多い。また,総資本利益率が比較的高いハイヤー・タクシー業,区域トラック業,通運事業,航空運送業,倉庫業等についても,かなり規模の大きい経営状況の良好な企業が調査対象となつているため,比較的高い数字がでているが,実際には中小・零細企業が多いので,運輸他業種と同様,総資本利益率はあまり高くないと考えられる。
  この総資本利益率は,営業収入利益率(純利益÷営業収入)と総資本回転率(営業収入÷総資本)の積として考えられるので,この2要因によつてみると, 〔1−5−3表〕から明らかなとおり,運輸事業には業種ごとにかなり大きな性格の違いがみられる。とくに,鉄道業と自動車運送事業とは好対照を示しており,巨額の固定設備を必要とする鉄道業が比較的高い営業収入利益率で低い資本回転をカバーしているのに対し,道路を自ら整備しなくてすむ自動車運送事業は,高い資本回転率によつて比較的低い営業収入利益率をおぎなつている。


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