3 総支出構成


  つぎに,運輸各事業の総支出構成をみると, 〔1−5−4図〕にみられるように,運輸事業においては海運業,航空運送業,ホテル業を除き,いずれも人件費の占める比重が,40〜50%前後で非常に高いことが特徴の一つである。昭和38年度における全産業,製造業の人件費の割合は,それぞれ7.4%,9.7%であり,運輸事業の労働力依存度がいかに高いものであるかを明白に物語つている。比較的人件費の比重が小さい海運業,航空運送業,ホテル業においても,図にみられるとおり,他産業に比べると若干高い。運輸事業の総支出構成にみられる今一つの特徴は,減価償却費,金融費用のいわゆる資本費のウエイトが高いことである。すなわち,全産業,製造業の資本費の比重は,38年度においてそれぞれ7.0%,8.6%であるが,運輸各事業においては,20%前後の高い比率を示す業種が圧倒的に多く,事業活動を行なつていく上で,巨額の固定設備を必要とすることを示している。
  このように,運輸事業においては人件費,資本費の比重が高いが,近年,人件費が労働需給のひつ迫化,消費者物価の高騰に伴う賃金水準の上昇によつて増大していること,また,需要増大に対処する大幅な設備投資を余儀なくされているため,資本費負担の増大を免れないこと,この二つの理由により,しだいにこれら人件費,資本費の比重が増大する傾向にあり,これが経営圧迫要因となつている。


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