1 国鉄の貨物輸送
(1) 現状
昭和39年度の国鉄貨物輸送実績は, 〔I−(I)−1表〕で示すとおり輸送トン数では対前年0.3%増の2億674万トン,輸送トンキロでは対前年0.5%減の589億トンキロの実績を示し,輸送機関全体からみると,国鉄のしめるシェアは輸送トン数では8.0%,輸送トンキロでは32.0%と漸減している。
このように貨物輸送が伸び悩んだ主な原因は,まず,輸送力についてみると,最近全般的に輸送力の不足は緩和されつつあるが,地域的,時期的および質的な面でなおその不足がみられ,災害事故等輸送障害による減送も多く,春闘による影響,6月の新潟地震,各地の集中豪雨および北海道,裏日本の雪害等による輸送障害が大きな影響を及ぼしている。
他方,輸送需要の面からみると、農,林,水産品および鉱産品等の出荷の横這い,或いは減少の傾向を示している。
次に39年度の国鉄貨物輸送の特徴としては,平均輸送距離の減少,コンテナ輸送の著しい増加傾向等があげられる。
輸送距離減少の著しい品目は農産品,化学工業品,機械工業品であるが,特に後の2品目は,輸送量は増加しており,これは近距離貨物であるこれらの品目について国鉄の出貨誘致の努力が実を結んだことを物語るものである。
また,コンテナ輸送の増加については,国鉄が貨物輸送近代化施策の一環として特に力を入れたこと,及びそれが荷主の需要にマッチしたこと等があげられるが,この事は今後の国鉄貨物輸送の近代化に対して大きな示唆となろう。
39年度の国鉄貨物輸送は以上の如く推移したが,これを主要品目別に示すと 〔I−(I)−2表〕のとおりである。
鉱産品は,全体では前年度に比してほぼ横這い状態であるが,国鉄の大宗貨物たる石炭が前年度に引き続き減少の一途をたどつている。
また,農産品については,鉱産品と同様に横這い状態であつたが林産品,畜産品,水産品では減少が目立つている。
他方,前年度に比較して増加した品目は,化学工業品,繊維工業品,危険品等であるが,化学工業品では鉱油,ガラス類の増加が大きく,繊維工業品ではパルプ,危険品ではガソリンの増加が目立つている。
(2) 施策
国鉄では貨物輸送の改善措置として,基礎輸送力の充実をはかり貨物輸送の近代化に努めた。まず,前者については,幹線輸送力の増強に重点を置き,電化,線路増設,貨物設備改良等諸施設の工事を進めるとともにヤードの能力増強にも努めた。また,貨車の増備についても,39年度は,10,401両新造したが,(内,廃車4,000両あるので純増分6,401両)なかでも有蓋貨車の増備に力を入れ,そのほか,冷蔵車,通風車等を新造して貨物の質的輸送の変化に対処した。
次に貨物輸送の近代化については,2章5節で詳述するが,ここで簡単にふれると,計画貨物,予約貨物制度を本格的に実施するとともに,パレット輸送,コンテナ輸送の拡大をはかつた。また,特急および急行車扱列車等の列車網の増強整備,物資別集約列車の新設による生産地と消費地との直結輸送等による輸送時間の短縮,到着時間の明確化に努力した。
また,秋冬繁忙期(10月〜12月)の出貨波動に対しては,各線区に貨物列車を増発して輸送の確保に努めた。
|