2 国鉄の旅客輸送


(イ) 概況

  39年度の旅客輸送は, 〔I−(I)−5表〕で示すとおり,輸送人員では,対前年6.1%増の64億1,000万人,輸送人キロでは,対前年7.5%増の1,642億キロの実績を示し,輸送機関全体からみると,国鉄の占めるシェアは輸送人員では22%輸送人キロでは46.2%となつている。
  上述の如く国鉄の旅客輸送実績は好調に推移したが,これを定期,定期外別についてみると,まず定期旅客は,通勤,通学定期人員の激増にともない,輸送人員は44億3,500万人で対前年6.5%と大幅な増加を示し,また,輸送人キロも対前年6.2%増の746億人キロの実績を示した。この増加傾向は,特に東京,大阪などの大都市において顕著であり,このため大都市における交通の混雑は著しく,通勤,通学時のラッシュは異常を極めている。

  他方,定期外旅客輸送は,新幹線が開業し,また主要線区についても線増・電化・車両増備等をはかり設備の許す範囲において輸送改善を行ない,さらに優等列車の増発による「座つて行ける」「寝て行ける」サービスの推進その他諸種の営業施策を講じ旅客の吸収確保につとめた結果 〔I−(I)−5表〕で示すとおり輸送人員では対前年5.2%増の19億7,500百万人(内新幹線1,100万人),輸送人キロでは対前年8.6%増の896億人キロ(内新幹線39億人キロ)の実績を示した。なお,優等列車の増発およびその利用状況を主要線区についてみると 〔I−(I)−6表〕のとおりである。

  次に,荷物輸送については,39年中に隅田川,汐留の荷物設備が新設され,従来東京,上野両駅で取扱つていた荷物を汐留,隅田川に移して客荷の分離をはかるとともに,また荷物専用列車の増発に努めたが,なお予期したほどの効果をあげ得なかつた。

(ロ) 多客期輸送

  所得と余暇利用の増大および人口の大都市集中化により多客期における旅客輸送需要は著しい伸びを示し,このため,国鉄においては 〔I−(I)−7表〕のとおり臨時列車の増発を行ない,また新幹線についても特急「こだま号」の2等を一部自由席にするなどの増強を図つたが,とくに年末,年始には 〔I−(I)−8表〕に示すとおり帰省客が集中し輸送波動のピークを形成した。

  一方,観光旅客については,昨年に引き継ぎ観光団体専用列車,団体専用寝台列車等の増発及び輸送サービスの積極的開発として車両単位の委託販売,セット旅行の推進,鉄道と自動車の結合輸送の強化,周遊券制度の改善並びに旅行あつ旋業者の活用による販売網の整備拡充等により旅客の誘致に多大の効果をおさめた。


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