2 完全な自動車整備の確保


(1) 定期点検整備の徹底

  自動車の整備状態を最良にしておくためには,国の行なう自動車検査の徹底のほかに,使用者による日常の手入れが十分行なわれる必要がある。最近の自動車は,性能の向上,道路の整備等に伴ない,その使用が高速度化及び長距離化しており,他方,自動車について十分知識のない自家用車保有者の増大により,ますます整備の重要性は高まつてきている。
  このため,昭和38年道路運送車両法を改正して,毎日運行開始前に行なう仕業点検に加え,1月ごと又は6日ごとに点検整備することを義務づけることになつた。この定期点検整備が普及するに従い,自動車の整備状態が向上し,路上故障発生率も着々減少しており,名神高速道路の例によると,1万台キロ当り故障発生率が38年度の0.662から39年度は0.453になつたが欧米の高速高道路に比べると,なお故障発生率は高い。路上故障は,円滑な道路交通を阻害することは勿論,ひいては重大事故を惹起している例も多いので,その絶滅を期するため,自動車使用者の整備に対する認識の向上と自動車整備事業者における点検整備の受入体制の確立を図つている。
  また,自動車運送事業者等多数の自動車の使用者には,整備の管理に関する業務の責任体制を明確化するため,一定の資格要件を備える者を整備管理者として選任し,届け出ることを義務づけている。40年3月末現在で,約42,000人の整備管理者が,定期点検整備の実施,自動車の運行の可否の決定,車庫の管理等の管理業務の責任者となつているが,研修を実施するなど,これら整備管理者を指導し,整備管理体制の確立と管理能力の向上を図つている。

(2) 整備要員の資質の向上

  自動車の整備作業は,車種,故障部位等によつて複雑多岐にわたりしかも人手にたよる面が非常に多いのが,その特徴である。従つて,精度が良くかつ能率的な作業をするためには,実際の作業に従事する整備技能者の技能水準の向上が必要である。このため,昭和25年以来,自動車整備士技能検定制度が設けられて,10種目について学科及び実技の両面について技能レベルが適切であるかどうか検定試験を実施しており,40年3月末現在で累計約51万名の整備士を生みだしている。とくに,最近は受験者数が急増し,年間約15万名が受験するほどの活況を呈している。
  また,38年の道路運送車両法の改正により,整備士養成施設の指定制度が創設されて,一定期間の計画的,系統的な整備教育と検定試験によるその教育効果の判定という一連の整備要員の教育訓練についての指導体系が確立された。40年3月末現在で205の養成施設が指定され,年間約12万名の教育訓練が行われている。

(3) 整備工場の認証,認定及び指定制度

  自動車の分解整備を行なう事業,いわゆる分解整備事業は,自動車の整備による保安の確保に直接の責任を担うものとして,事業場ごとに認証を受けなければならないこととされ,認定に当たつては,事業場の設備及び従業員が所定の基準に適合する等一定レベル以上の人的物的能力を有することが要求されている。さらに,優良な整備事業を指導育成するため,優秀な設備,技術及び管理組織を有する自動車又はその部分の整備又は改造を業とする者に対しては,モデル工場として,事業場ごとに優良自動車整備事業の認定が行なわれる。40年3月末現在で,認証工場が約36,000工場,認定工場が約1,200工場ある。これらの整備工場に対しては,前述のような近代化促進のための施策を推進するとともに,適正整備の実施について指導監督を行なつている。
  また,自動車分解整備事業者で優良自動車整備事業者の認定を受けた者の中から厳選して指定整備事業者を指定し,前記の国の行なう検査の一部を委託して検査業務の合理化を図つているが,その指定に当たつては厳格な資格認定を行ない。監査,研修等により厳重な指導監督している。


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