1　海運市況の推移

　　一方,世界の商船船復量もいぜん増勢を持続した,ロイド統計によれば世界の商船(100総トン以上の鋼船)は,39年の年央において,4万859隻1億5,300万総トンに達し,前年同期より1,288隻714万総トン,4.9%増加した。この増加量は,前年の増加量588万総トン(4%)を上回つた。船種別にみると,油送船が前年の増加量182万総トンに対して約2倍の344万総トンの増加を示したのに対して,油送船以外の船腹は前年の増加量407万総トンをやや下回つて370万総トンの増加にとどまつた。
　　不定期船市況は38年に引続きおおむね堅調に推移した。
　この動向を英国海運会議所の運賃指数 〔II−(I)−２図〕でみると,38年10月米国余剰農産物のソ連売却承認発表により134.8まで急騰した市況も,39年2月にはソ連の買付量が減少したことなどから反落し,3月の指数は107.0までに低落した。期待された春高は油送船の穀物輸送量が増大したこと,共産圏諸国の小麦の計画的買付け等により,輸送の季節変動の幅が縮少したため,110.3にとどまつた。しかし,世界の経済活動の活況を反映し,原材料物資の荷動きの活発化に加え,インドの食糧危機に伴う船腹需給とソ連および東欧諸国が再び小麦の大量買付けに出る場合の秋高を懸念した船腹の早期手当などが重なり,夏場も8月の105.3を底として比較的安定した水準で推移した。9月後半,米国港湾労組および英国港湾労組のスト突入気配が濃厚となるに伴

　い,期近物の船腹手当が活発となり,市況は9月末より急昇に転じた。10月1日米国港湾労組のストは延期されたが,スト再燃の不安による年内物の船腹手当が急がれたことと欧州向け穀物需要も旺盛であつたことなどから,市況も一段と堅調を示し,10月の運賃指数118.8,11月は120.0と上昇した。11月下旬英国港湾労組の賃上げ交渉が解決し,米国港湾労組の協約改訂も妥結の見通しが強まつたことなどから,市況は年末にかけてやや軟化したが,年間平均指数は112.1と前年の109.0を上回つた。
　　油送船市況は年間を通じて前年より低落した。これは市況の悪化,低レートの大型油送船が増大してきたことなどのためである。USMCレート,すなわ

　ち米国政府が戦時中に採用した公定運賃率を100とする指数でみると,年間平均では,47.5と前年の54.6を大きく下回つた。
　　係船量は 〔II−(I)−５図〕のとおり,市況の好転をうけて貨物船では38年11月末100万総トン台を割り,39年末には48万総トンにまで減少した。油送船は,市況の悪化を反映して39年年初の50万総トン弱から8月には100万総トン台に増加したが,グレン・タンカーへの進出もあり,12月末36万総トン強で市況不振にかかわらず減少している。