2 輸送概況


  昭和39年度の内航海運による輸送量は,輸送トン数においては1億6,500万トンと前年度を7%下回り,輸送トン・キロにおいても771億トン・キロと前年度を2%下回ることになつた。
  このように,昭和33年度以降順調な伸びを示してきた内航海運の輸送量が,39年度において若干の減少を示すようになつたことは,毎年度後半に見られる輸送量の大幅な伸びが,39年度においては見られなかつたためである。39年度に入つてから企業倒産の続出等で示される景気不振は,鉱工業原材料が大部分を占める内航輸送に敏感に反映して,輸送需要の減少あるいは鈍化となつて表われてきたものと考えられる。
  この輸送量を,輸送した船種別にみると,500総トン以上の大型鋼船による輸送量は,景気不振にもかかわらず,4,700万トンと前年度に比し9%増の伸びを示した。これは大型鋼船においてはその主要貨物である石炭・鉄鋼・セメント・石油等について長期輸送契約による専用輸送を行つている船が多いためであつて,景気の波に左右されず,安定した輸送を行うことができたためと思われる。
  500総トン未満の小型鋼船による輸送は,石油の輸送量が,前年に比し32%増と大幅に伸びたにもかかわらず,全体としては,6,900万トンと前年度にくらべて6%の減少を示すこととなつた。これは石油以外の貨物が4,500万トンとなつて前年度に比し82%と大幅な減少を示したためである。とくに小型貨物鋼船の主要貨物である石炭・鉄鋼の輸送は前年度にくらべて,それぞれ18%,8%の大幅な減少となつてこれが輸送減少分の大半を占める結果になつている。
  木船による輸送は,37年度以降の減少傾向にさらに景気不振の影響を受けて大幅な減少を示し,39年度における木船の輸送は4,800万トンと前年度に比し80%となつて著るしい減少を示した。輸送貨物もそれぞれ軒並に減少し,主要貨物である砂利・砂・石材,石炭,鉄鋼は対前年度比それぞれ54%,92%,80%となつている。このような木船による輸送の大幅な減少は,景気不振による影響があるにせよ,鋼船と比較したときの木船の経済的な劣性に基づくものであり,今後も減少の過程をたどらざるをえないものと思われる。
  ともあれ,内航輸送において,39年度輸送量は減少したが,この中において,大型鋼船による輸送の着実な伸びに対して,木船による輸送の大幅な減少は,内航輸送における著るしい構造的変化を示唆するものであろう。


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