3 内航主要貨物
石炭は,油送船以外の内航貨物船にとつては,依然として最大の貨物であり,内航における大宗貨物である。39年度における石炭の輸送量は3,400万トンで,出炭量の減少によつて輸送量も前年度比8%減となつたが,全内航輸送量の21%を占めている。さらにこれを輸送した船種別に見ると,大型鋼船が48%と約半数を占め,以下小型鋼船30%,木船22%となつている。
石炭は九州,北海道にそのほとんどが生産され,大部分が阪神・中京・京浜で消費されるので,石炭の輸送は,比較的輸送コストの安い船舶が使われ,船舶による輸送は全輸送量の60%を占めている。
これを発地別にみると38%が北海道から,55%が北九州・東九州から輸送されており,着地別では27%が京浜葉に,9%が中京に,33%が阪神に輸送されている。とくに北海道からの輸送が従来にくらべて多くなつて来ており,これが大型鋼船による輸送需要を増大させ,専用船・専航船による輸送割合を大きくさせている。
石炭についで輸送量の多い貨物は鉄鋼である。鉄鋼の輸送は鉄鋼の生産の著るしい伸びとともに急速に増加してきた。39年度輸送量は2,400万トンで,前年度に比して520万トンも大幅に減少したが,全内航輸送量の14%を占めている。これを輸送した船種別にみると小型鋼船による輸送が58%を占め,木船が22%,大型鋼船が20%となつて,その約6割が小型鋼船の輸送するところとなつている。従つて,今後の鉄鋼輸送の動きは小型鋼船の船腹需給に対して多大の影響を及ぼすようになるものと考えられる。
砂利・砂・石材は,ここ数年来の建設ブームによつて急速に伸びて来た貨物である。砂利等の需要増に対して自動車による輸送可能な近距離圏内の供給だけでは不十分となつて,船舶による輸送が増加してきたものと考えられる。39年度の砂利・砂・石材の輸送は1,200万トンで全内航輸送の7%を占めている。これを輸送した船種別に見ると木船による輸送が最も多く全体の59%を占め,残り41%を小型鋼船が輸送している。小型鋼船による輸送はほとんどが,静岡から京浜葉に輸送するものであり,一方木船による輸送は中京圏内の輸送および,徳島から阪神への輸送が大半を占めている。木船による砂利・砂・石材の輸送は木船輸送貨物のうちで最大であり,木船輸送量の16%を占めている。
木船輸送量の全般的減少傾向の中で,砂利等の輸送需要の増大は木船船腹需要を幾分でも支えるものとして木船輸送貨物の中で重要な地位を占めてはいるが,砂利等の船舶による輸送からみれば,その供給地も制約され,また自然量にも限度があるために,今後は今までのような大きな伸びは期待できないものと考えられる。
石油の輸送(はしけによるものを除く。)は,39年度に入つて,ついに内航の最大輸送貨物となつた。石油の輸送量は前年度に比べて121%と増大して,3,700万トンとなり,全内航輸送量の22%を占めている。内航輸送量と相関関係の強い石油国内需要量が石油審議会による石油供給計画において,さらに将来に亘つて相当量の伸びが予想されていることから,内航輸送需要も相当の伸びが期待できる。
石油の輸送は,その性質上殆んどが油送船により輸送されるが,小型鋼製油送船による輸送量がその66%を占め,大型鋼製油送船31%,木造タンク船3%となつている。
以上についで,セメント・石灰石・非金属鉱物・化学薬品・木材が内航海運の主要貨物となつている。このうちセメントは前年度に引き続き輸送量の増加した貨物であつて,全内航輸送量の6%を占め、その67%がセメントをバラで輸送するセメントタンカーの大型鋼船によるものであり,残りのうちの30%が木船により輸送されている。石灰石,非金属鉱物,化学薬品,木材はそれぞれ,全内航輸送の4%,4%,3%,2%を占めている。
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