5 経営の不振


  内航海運業者の40年4月における状況は,登録を受けた事業者がそれぞれ内航運送業1万1,247,内航船舶貸渡業1,398,内航貨物取扱業1,329となつており,このほか20総トン未満の船舶により内航海運業を営む者が6,772の多くにのぼつている。しかも,これらの多くが,いわゆる一ぱい船主であるため,その経営の実態を正確に把握することは非常に困難である。
  内航海業者のうちで木船事業者および一ぱい船主を除き,内航海運業を主とする会社を対象にして調査した結果は, 〔II−(I)−14表〕のとおりであり,苦しい経営の状況を示しており,考朽船をかかえ,近代化への力を欠く状況を示している。

  また,自己資本比率は10%と極めて低く,船舶の建造をほとんど借入金でまかない,このため金利の支払に追われ,しかも急速な技術革新と船主の輸送コスト節減の要求に応えるために,新船の建造を行なわなければならず,総体的な過剰船腹を招き、不健全な経営に陥つていることを物語つている。さらに内航海運の経営不振の原因として看過することのできないのは,年々10%以上の比率で上昇する船員費の圧迫である。40年4月に妥結した内航2団体(火曜会,一洋会)と全本海員組合との協約改訂交渉によつて定期昇給分を含め,月間船員1名当り6,000円の給与引き上げが行なわれた。この結果2団体は年間約7億円程度の負担増となつた。本年秋には更に賃金改訂の交渉が行われることになつており,船員費は益々重大な問題となつている。


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