6 内航船舶の近代化
内航船舶の近代化は,各種専用船の増加傾向に集中的にみることができる。
内航専用船は,39年末には325隻,42万9,000総トンになつており,32年の32隻5万5,000総トンに比べて,隻数にして約10倍,トン数では約8倍と急激に増加してきた。( 〔II−(I)−15図〕参照)
船種も,石炭専用船,鋼材尊用船,セメント専用船,鉱石専用船,LPG専用船,自動車専用船,アスフアルト専用船,薬品タンカー等多種類にわたつている。専用船は,輸送貨物に最も適した構造を有していることと,長期にわたつて輸送貨物の保証をすることにより,一般船に比して低い輸送コストで輸送できるので,内航輸送におけるばら積貨物を中心とした大口需要の増大とともに,今後さらに増加していくものと考えられる。( 〔II−(I)−16図〕参照)
特定船舶整備公団と海運業者との共有方式による専用船等の建造は,38年度で終了した戦標船対策のあとをうけて,39年度からは老朽船対策として引き継がれたが,39年度は25億4,800万円の財政資金(うち7億600万円は石炭産業合理化事業団資金)により, 〔II−(I)−17表〕のような代替建造が行なわれることになつた。
特定船舶整備公団との共有方式による代替建造は,1総トンの建造に,1.5総トンの解散を要求することにより,船舶の近代化と船腹過剰の解消との両目的を兼ねて行なわれている。先に述べたとおり,現在は最高限度の設定を要するような総体的な船腹過剰下にあり,しかもその船腹構成が鋼船が約1割木船においては約7割がすでに法定耐用年数を経過した老朽船である現状においては,公団方式による代替建造をさらに強力に推進する必要があり,40年度においては,39年度の約2倍の規模で行なわれることとなつた。
すなわち,資金面では,財政融資51億3,600万円(うち石炭産業合理化事業団資金8億600万円),建造規模は8万3,000総トンとなり,建造船種には,従来の石炭専用船,鋼材船,油送船のほか,セメント輸送舶と鉱石類輸送船とが加えられ,解撤対象には従来の老朽鋼船,運炭機帆船,沿岸木造タンク船のほかに,法定耐用年数を経過した一般老朽船が加えられた。
しかし、この代替建造の推進にあたつては次のような問題が生じている。すなわち,自己所有船の解撤には限度があるため,新船建造にあたり老朽貨物船等の手当が必要となるが,これが一方では,零細事業者の営業補償または転業補償的性格から,他方では,ブローカーの介在等により,老朽貨物船等の価格騰貴をきたし,入手難を生ぜしめているとともに,入手した場合にも,建造船価に付加される旧債分として,採算面で本来発揮すべき公団船の有利性を減じさせ,返済期間が長期であることによる資金繰りの有利性はあるものの,その魅力を減少させている。39年度においては,機帆船事業者の共同出費により設立された会社が,石炭専用船を建造することが認められ,2社,2隻4,800総トンの石炭専用船の建造が行なわれ,零細事業者の集約化の一つの方向が打ち出されることになり,今後もこの方向での企業集約,近代化が進められなければならないが,解撤船価格の安定化のための対策とともに,解撤の比率,融資割合等について,船腹量の調整と船舶の近代化の両目的を円滑に達成していくための方策が検討されなければならない。
新らしい輸送方式として押航艀船団輸送方式(プッシヤー・バージライン・システム)による内航輸送が,最近各方面の注目を集めるようになつた。現在運航中のものには,須磨-神戸間,備讃瀬戸-坂出間,徳島-堺間の土砂運搬用に使用されているもの,津久見-徳山間,小倉・門司-岡山・福山・広島間のセメント輸送を行なうもの等がある。押航艀船団輸送方式の特徴は,建造費の安価な艀と高価な押船を分離して,それぞれ最適稼働率で回転させうるところにある。すなわち,高価な押船は,積卸しの荷役時間に拘束されず,稼働を行なうことができ,また艀は荷役上最も適した方法と速度で荷役することができる。このほか乗組員が少くてすむために,輸送コストは一般船に比して大幅に削減することができる。しかしながら,沿海輸送における船団の連結方法等,安全性,航行性に関する技術的問題の解決がまだ十分とはいえず,現在,沿海で運航しているものは,艀1隻だけを押してゆくワンツーワン式であるが,これらの問題を解明するために総合的な研究が行なわれており,瀬戸内海を中心に,石炭,石灰石,鉄鋼,その他ばら積貨物輸送を中心に大いに利用されることも近いと考えられる。
また,船舶の近代化のために,スラリー専用船,パレット船,コンテナー船等の開発研究も行なわれている。
船舶の近代化は,また,船舶の自動化の面にも現われている。内航海運においても,船員の充足が困難となつており,船員費も毎年10%をこえる著しい上昇となつている。これらの傾向は,今後さらにきびしくなることが予想されるので,乗組員の削減は,内航海運にとつて非常に大きな問題となつてきた。
このため,船舶を自動化することによつて,乗組員を削減し,労働生産性をたかめることが真剣にとりあげられ,自動化船の建造が最近急速に行なわれており,在来船を改造して自動化しようとする希望も相当数に達している。しかしながら,自動化には相当の費用がかかるために,経営不振を続けている内航海運業界には,その資金手当のできない中小業者が多く,何らかの措置を必要としよう。
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