2 内航部門
外航部門の求人が,船員教育機関卒業生に依存し,かつ一部縁故採用を除いて,ほとんど船員教育機関卒業生によつて充足されているのに対し内航部門では,ようやく家族労働への依存から脱皮し,地域の労働力を開拓し,さらに船員教育機関卒業生に対する求人希望が増加してきている。海員学校卒業生に対する求人は, 〔II−(II)−1表〕によるとおり昭和39年春160名,同年秋102名,40年春193名,卒業生に対する求人希望率は51.9%,121.4%,54.7%と増加の一途を示している。にもかかわらず,就職者は,外航が採用を手控えた39年春を除いて同年秋及び40年春は1名の就職者もえられなかつた。その理由は,内航の労働条件,労働環境が到底外航のそれに刀打できないからである。内航における鋼船化の進展,尊用船化及び自動化の採用は,もはや古い労働力調達の方法で得られる未熟練船員によつては消化しきれないものとなり,いきおい船員経験者の集中する船員職業安定所に人を求めることとなつた。
船員職業安定統計による内航部門の船員職業紹介状況は 〔II−(II)−2表〕のとおりである。
この表によれば,職員においては,甲板部職員はおよそ求職は求人を上廻つているが,機関部職員は次第に求人難が著しくなり,とくに乙一乙二の免状所
有者の求職が,求人の2分の1以下になつてきていることを示している。にもかかわらず成立数は甲機ほぼ同数であつて,甲板部職員については求人側の条件がみたされているに対し,機関部職員については求職側の条件が高く,求人側の条件がみたされていないことを示すものであろう。
次に部員については,甲板部,機関部ともに求職において,はじめて船員となろうとするものは,船員経験者に比べて極めて僅かである。同様に求人側においても未経験船員には依存を示していない。経験船員をめぐる求人求職の関係は,甲板部においても機関部においても,求人はほぼ求職の2倍前後にある。しかも求人成立は,おおむね50%以下で,充足困難を示している。
内航部門における船員の需給関係は,以上のとおりであるが,内航海運業法によつて内航海運の構造改善が強力に押し進められようとしているので,内航部門における熟練船員の需要はさらに増大するであろう。とくに外航部門が大量建造によつて船員需要が増加するにつれて,内航部門からの吸収も強まるであろうと思われる。したがつて内航の船員需要をみたすためには,船員の定着性を高めるため賃金の引上げ,労働時間の短縮,休日の付与など労働条件の改善とともに雇用制度のあり方を検討する必要があろう。あわせて船員教育計画の検討をすすめる必要があろう。
漁業における船員需給は,職員については,一部の大手企業が水産関係船員教育機関の卒業生を採用するほかは,ほとんど企業内での昇進によつてまかなつており,職業定安所に依存することはほとんどない。したがつて,資格を取得するための講習会はきわめて活発で,海技従事者国家試験の臨時試験は,このような講習会の直後に行なわれ,年々受験者が増加している。しかし部員については,沼津漁業の不振,陸上産業の労働力需要の活発化によつて,漁業地域の新規学卒者の漁業への就業は年々減少していること,また水産高校の卒業生も現行船舶職員法のもとでは20才に達しないと受験資格が得られないこととなつていることも関連して,漁船への就職が年々減退し,退職も多くなる傾向があらわれており,需給のアンバランスが目立つてきている。
漁船員の自然減耗率は,37年に比べ38年には職員は何れも6%前後に減少した。しかし部員では,甲板部14.7%,機関部8.9%,事務部11.7%と,前年のそれぞれ11.9%,10.7%,15.3%と比べ,甲板部部員の移動がきわめて顕著である。
このような部員の需給事情を改善するため,40年3月から,水産高校卒業生に対し筆記試験がうけられるよう船舶職員法施行規則が改正され,また労働条件,労働環境の改善に努力が払われている。
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