4 港湾労働


  ここ数年来わが国の労働事情はかなりひつ迫した状態にあるが,とりわけ港湾においては労働力の不足が顕著であり,もともと労働力に依存する度合が大きいために深刻な問題となつている。
   〔II−(III)−21表〕は5大港における最近数年間の港湾労働者数(日雇労働者を含む。)の推移を示したものであるが,各部門とも取扱量の増加に比べて労働者の増加ははるかにこれを下回つている。39年には,前年に比べて,沿岸,はしけの両部門においては労働者数は横ばいないしは減少を示しており,荷役量の増加が大きくしかも荷役の機械化の余地の乏しい船内部門においてすら微増にとどまつている。
  一方,日雇に対する依存度をみると,港湾運送は本来需要の波動性がきわめて大きいため,事業者としても常に最大需要に対応した労働者を確保しておくわけには行かず,作業繁忙時には日雇労働者によつてこれをまかなつており,はしけ運送を除いては日雇労働者がかなりの比率を占めているが,とりわけ5大港の船内荷役においては,6割近くまで日雇に依存している状態である。こうした状態は,最近の労働事情のもとでは労働力の確保を困難ならしめるとともに,労働者の雇用の安定の面からも強く指摘されているところである。
  この点で注目すべきは,40年6月に第48回通常国会で成立した「港湾労働法」である。この法律は,「港湾運送に必要な労働力を確保するとともに,港湾労働者の雇用の安定その他港湾労働者の福祉を増進させること」を目的として制定されたものであり,日雇労働者を登録制にして,不就労時に一定額の手当を支給することとした点において,わが国労働行政上画期的なものである。
  なお,港湾労働者の福祉施設整備を目的として設けられた「港湾公共福利施設分担金」制度については,これを受け入れ,実施する母体として,全国各ブロツクごとに港湾福利厚生協会(財団法人)の設立が進められていたが,ようやくこれを完了したので,今後は港湾労働者の確保とその福祉増進のために大いに活用されるものと期待されている。


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