3 運営状況


(1) 運営路線

  わが国の国際航空事業は,一部の路線を全日本空輸(株)が運営するほか専ら,日本航空(株)がその運営を行つており、昭和40年6月現在の両社の国際路線運営状況は 〔III−11表〕のとおり15路線週51往復である。これは,現在わが国に乗り入れている外国航空会社18社に日本航空(株)及び全日本空輸(株)の2社を加えた20社が,わが国を中心に運営している週177往復(40年6月現在)の29%に当り,前年同期の本邦航空便数比率が24%であることを考えれば,この間における本邦航空の目ざましい路線整備の進展がうかがわれる。

  昭和39年度から40年度当初にかけて整備された路線は 〔III−12表〕のとおりであるが,なかでも,日本航空(株)のドル箱路線である中部太平洋線及び北回り欧洲線における増強は著しく,中部太平洋線では,40年4月からは,パン・アメリカン航空会社と同じ週17往復の運航を行なつている。

  また,北回り欧洲線においては,同じく40年4月から外国各社の週2往復に対し日本航空(株)は週4往復の運航を行なうに至つている。
  このように日本航空(株)は,最近,目ざましい路線及び機材の拡充整備を行なつてきたのであるが,これを国際的な視野から見ると,その輸送量はかならずしも満足すべき状態ではない。昭和38年においては 〔III−13表〕のとおり,IATA加盟91社中第14位にすぎず,またICAO加盟101カ国の航空会社が営む国際航空事業に占める日本航空(株)の輸送上のシェアーもICAO統計によつてみると 〔III−14表〕のとおりで,総旅客人キロの約1.9%,総座席キロの約1.6%,飛行距離において約1.6%にすぎず,同じ様な立場から出発した西独のルフトハンザ航空会社の場合,IATA加盟航空会社中第6位の輸送量で各指標とも,3.5〜4%のシェアーを占めているのと比較すると日本航空はその2分の1程度であり,なお一層の努力が必要であろう。

(2) 輸送状況

 (イ) 旅客

      昭和39年度における日本航空(株)の輸送状況は 〔III−15表〕のとおりであるが,旅客についてみると,前年度は経済の活況,海外渡航の制限緩和等による日本人旅客の急増に支えられて旅客人キロは大幅な伸び(対前年度比36%増)を記録したが,39年度は海外渡航の自由化,オリンピックの開催等による大幅な旅客需要の増加が期待されていたにもかかわらず,対前年度比23%増にとどまつた。これは主として,わが国の経済沈滞及びオリンピック時における混雑を見越した旅客の一時的な敬遠等によるものと考えられる。

      一方,座席キロは大幅増便及び機内の模様替による一機当りの座席数の増加によつて対前年度比34%増と前年度の伸び率24%増を大幅に上廻る結果となつた。従つて,座席利用率の点からみると,39年度は旅客人キロの伸びが期待ほど上がらず,座席キロの伸びに追いつかなかつたため前年度59%と一旦改善された座席利用率は,再び低下傾向を示し,37年度と同じ54%に転落した。
      座席キロの増加は、通常,増便等によるものが中心であるが,日本航空(株)の場合新機材の投入による増便,機材の稼動率の増加によるもののほか,あまりコスト的にひびかない1機当りの座席数の増加を行なうことによつている。この座席数増加は運航諸費の面においては多少の経費増とはなるが,むしろ1座席当りではコスト低減となつて,損益分岐利用率が低下するので,一概に座席利用率の低下をもつて収支悪化と考えることはできない。
      一方,座席利用率の低下傾向は,世界的な傾向であつて,日本航空(株)の場合にも,この傾向から免れることはできないと思われる。幸い,日本航空(株)は,これまで比較的高い座席利用率を維持してきたのであるが,今後,国際競争がますます熾烈の度を加えるにつれて,高い利用率を維持していくことは困難となろう。
      次に,路線別に、日本航空(株)の旅客輸送状況をみると 〔III−16表〕に示すとおりで,基調としては,北回り欧洲線を除く,各路線とも,旅客人キロの伸び率が座席キロの伸びに追いつかず,従つて,座席利用率の低下を来たしている。

      まず,座席キロの面からみると,沖縄線の伸び率が79%増と目立つているが,これは,主として,従来,東京-沖縄-香港線として運航され,東南アジア線に集計されていたものが,39年4月から沖縄-香港間を運休して,東京-沖縄線として運航したため,沖縄線の実績として集計されたこと及び8月からジェット機の大阪寄港が可能となつたため,大阪-沖縄線を再開し,従事の福岡-沖縄線週3往復を,週2往復とし,大阪-沖縄線週2往復,計4往復としたことによるものである。
      そのほか,太平洋線及び東南アジア線においては,増便あるいは席数増加等によつて,座席キロは,対前年度比それぞれ34%及び39%増と大幅に伸びたが,北回り欧洲線及び南回り欧洲線においては,便数の増加はなく,座席数変更による影響と北回り欧洲線における冬期減便の中止等により,それぞれ24%及び19%増にとどまつた。
      つぎに、旅客人キロの面からみて大きな伸びを示したのは,やはり沖縄線で対前年度比42%増となつたが,これは,前述したとおり,統計処理の見かけ上の増加が大きいが,一面,大阪-沖縄線の再開による旅客の実質的増加によるものも見逃しえない。
      このほか,対前年度比の面からいえば,東南アジア線27%増,北回り欧洲線26%増,太平洋線22%増と各路線とも平均した伸びを示したが,なかでも,前年度の伸び率と比較して,東南アジア線の伸びが注目される。
      東京国際空港の出入国旅客の動きをみても,東南アジア方面の旅客は,最近,急激に増加しており,特に日本人旅客の増加は,顕著な伸びを示しているが,これは,渡航自由化が大きな要因として働いているものと思われる。この様な動きの中にあつて,東南アジア線の占める地位は,太平洋線に次ぐ重要な意味を持つてきており,座席利用率も年間61%と他の路線を大きく引き離し,特にシーズンでは,80%を越す月もあつて異常な活況を呈している。
      一方,開設以来3年目を迎えた南回り欧洲線では,各国の有力な航空会社間の競争が激化の一途をたどつており,わずか2往復程度の便数では,国際競争上の不利は免れず,旅客人キロの伸びは,対前年度比10%増にとどまつている。
      このような,座席キロ及び旅客人キロの状態から,各路線の座席利用率は,一般に前年度より低下している。
      すなわち,増便を行なわなかつた北回り欧洲線がほぼ前年度と同じ利用率を維持できたのみで,それ以外の各路線は,5〜13%程度の利用率低下となつている。
      特に悪い路線は,ソウル線(21%)であり,新設路線というハンディキヤップがあるとはいえ,同一路線を運航するノースウェスト航空会社の利用率53%と比べ著しく悪いことが明らかであり,今後の努力が期待される。
      また,沖縄線の利用率は,前年度61%から39年度は,48%と大幅に低下しているが,これを,さらに路線別に細分してみると,大阪-沖縄線及び福岡-沖縄線がほぼ前年度並みの利用率を維持しているにもかかわらず,東京-沖縄直行便が,31%と非常に悪かつたことによつて,全体の利用率を引き下げた。
      東南アジア線においては,台北線のように68%から74%へと,利用率が前年度より大幅に向上したところもあるが,香港直航便及び12月から開始したバンコック線の利用率が悪かつたため,全体としては,利用率の低下をみた。
      また,大平洋線においては,年度当初は,増便にもかかわらず,前年同期を上回る利用率を確保できたが,オリンピック増便を開始した9月頃から急激に利用率は悪化し,オリンピック時には盛況を予期されていたが,10月は49%と通常月以下の利用率となり,以後,一時は,30%台に落ち込むなど,大幅な旅客需要の減に直面し,結局,年間利用率は,前年度を6%下まわる54%にとどまつた。

 (ロ) 貨物

      昭和38年4月,貨物輸送の需給過剰からくる大幅赤字のため,DC-7F型機による太平洋線貨物便を運休して以来,40年4月からのDC-8F型機(賃客混載機)によるサンフランシスコ線の開始まで,日本航空(株)は,本格的貨物輸送サービスから手を引いた形となり,貨物輸送分野における日本航空(株)の後退は 〔III−17表〕にみるとおり,東京国際空港における出入国貨物のシェアーに歴然と示されている。しかしながら,昭和39年度は,旅客機の貨物室による貨物輸送ではあつたが,日本航空(株)の貨物トンキロは世界的航空貨物の活況に支えられ,対前年度比23%増の輸送実績を示した。しかしそのシェアーは,東京国際空港において39年19%で,同社の便数比以下であり,特に重要な太平洋線においても,輸出18%輸入25%と昭和35〜37年の積取比率の半分程度まで落ち込んでいる状態である。

      なお,40年度から,DC-8F型機の投入により,ますます発展する国際貨物市場におけるシェアー獲得のための努力が開始されており,その成果が期待されている。

 (ハ) 郵便物

      郵便については,料金算定の基礎となる距離が従来各区間の合計により算出されていたのが,39年度当初から最短コースをとる方法に改訂されたため,同一区間を輸送しても,従来どおりの運賃収入が期待できなくなつたため,各航空会社とも,相当恐慌を来たしたが,日本航空(株)の場合は関係者の配慮により,その単価減による減収分を郵便量の増加でカバーしたため,郵便トンキロは,前年度比40%増と飛躍的に増大した。しかしながら,各国政府とも,今後は,自国航空会社保護の見地から,自国航空会社に対する割当てを増加させる方法をとると思われるので,外国発便については,相当因難な場面にぶつかるおそれがあるであろう。


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