3 収支状況および財務状況


  日本航空(株)の昭和39年度(第15期)収支は,国際線,国内線合せて経常損益で37億16百万円の利益を生じたが,乗員訓練費等の繰延費用の末償却残高25億67百万円(39年度末)を全額特別償却するとともに,税金引当金67百万円,乗員訓練費補助金3億36百万円等の特別損益の調整を行なつた後,当期純利益として14億17百万円を計上した。この純利益により,前年度繰越欠損金13億円を解消し,37年度に計上した大幅赤字(28億39百万円)は,38,39年度の2カ年間で完全に補てんされた。
  このうち国際線の経常収支についてみると, 〔III−18表〕のとおり,経常利益総額の約半分の18億22百万円の利益を国際線においてあげ,国際線開始以来,はじめて黒字となつたことは,特記すべきことであろう。

  この黒字を生みだした最大の原因は,需要の伸びに支えられるとともに,企業合理化による損益分岐利用率の引き下げによつてもたらされたと考えることができる。
  すなわち,国際線の総収入の伸びは,対前年度比22%増であるのに対し,総費用の伸びは,15%増にとどまり,従つて有償トンキロ当り収入が146.12円と,前年度の147.83円から若干低下(1.1%減)したにもかかわらず,有効トンキロ当り費用は,80.42円と、前年度の91.87円の12.5%減まで低下し,この結果損益分岐利用率は前年度の62%から一躍55%となつた。
  このため,重量利用率が,前年度の62%から59%に低下したにもかかわらず,大幅な黒字を計上することができたのである。
  このコスト低減は,主として,大幅な座席数増加あるいは,燃料及び保険料等の単価安に基づくものと考えられるが,すでに,これらの面からするコスト低減は限界に近くなつていると思われるので,今後,損益分岐利用率を引き下げるためには,積極的な企業合理化を真剣に推進することが必要であろう。
  次に,同社の財務状況をみると 〔III−19表〕のとおりであるが,39年度は,大幅な収支改善によつて,前期繰越欠損金約13億円を埋め,かつ23億5,800万円の増資を行なつたため,資本の部は対前年度比27%増と大幅に増加した反面,負債の部は,固定負債が大幅に減少したため対前年度比11%増にとどまつた。

  この結果,自己資本比率,負債比率及び固定負債比率等の財務比率は 〔III−20表〕にみるとおり,若干改善された。

  一方,従来,不良資産として問題とされていた乗員訓練費の繰越資産は,39年度の収支好転により全額特別償却された結果,繰越勘定は,前年度末の40億円から3億円までに減少し,この面における財務内容の改善も進んでいる。


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