1 世界の観光旅行の状況


  世界的な国際観光往来は,1963年に引続いて大幅に増加し,1964年には全世界の外国旅行者は,IUOTO(官設観光機関国際同盟)の推定によれば,前年にくらべておよそ16%増加して,1億人をこえ,その観光消費額も100億ドルをこえた 〔IV−1表〕

  このような国際観光往来の増加は,ベトナム,マレーシアの紛争等の国際観光往来を阻害する要因があつたにもかかわらず,それにまさる世界的な好況の持続及び国際交流の増進によるものと思われる。
  次に,これらの外国旅行者はどの地域を訪問しているかを 〔IV−2表〕によりみると,最も多い地域は,北米及びヨーロッパであり,両者を合わせると全世界の観光往来の約9割を占めている。

  ラテン・アメリカ,アジア,オーストラリア,アフリカの諸地域は増加率においては,北米,ヨーロッパの二大観光圏をしのいでいるが,全世界の国際観光において占める割合はきわめて小さい。
  主要国の1963年の観光収支をOECDの資料によりみると 〔IV−3表〕のとおりである。

  これら観光収支と一国の経済との関連はきわめて密接であり,たとえば国際収支における役割をみてみると,OECD加盟諸国では,観光収入の経常収入に占める割合は平均して6%に達しているが,一部の国々ではきわめて高く,その割合は,スペインでは30%を越え,オーストリア,アイルランド,スイス,イタリー,ギリシアでは10〜20%に及んでいる。したがつて,これらの諸国では観光収入に対する関心はきわめて高く,また観光客誘致にもそれだけ力を入れており,これら諸国の国際収支の改善に大きく寄与している。
  次に,世界的に旅行者が中所得者層,青年層へと拡大していることに伴い,宿泊施設,その他の観光関係施設の料金及び生活費の比較的安い国が観光客を集めつつあり,特に欧州諸国ではいわゆる補助的宿泊施設であるキャンプ場,家具付の部屋,貸し家,貸し間等を利用する旅行者もかなり増加している。
  また,旅行に対する好みの変化として,風俗習慣の異なつた国,未知の国へ短期間ではあるが,数多く旅行する傾向,キャンプ旅行,キャラバン旅行が増えてきている傾向,さらに単なる観光旅行ではなく,スポーツあるいは文化活動(音楽祭,演劇,国際会議,民俗的行事,歴史的式典等)を対象に旅行する傾向が顕著である。


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