1 船舶輸出


  昭和40年度の輸出船受注量は,554万総トン,9億3,000万ドルに達し,これまでの最高であった38年度の437万総トン,7億7,936万ドルを凌いだ。これは,前年度に引き続き,ギリシャ系および北欧系船主よりばら積貨物船を中心に大量の受注があったためである。このように40年度において輸出船の大量受注を確保できたのは,米国の5年間にわたる景気の七異を中心とする自由主義経済圏の景気の上昇に伴う海上荷動き量の増加と海運市況の好況により,船腹の需要がおう盛であったことによることはもちろんであるが,わが国の造船技術が世界的に高く評価されている上に,世界の海運が求めている超大型船舶の建造体制が整い,建造方式の合理化による工数の低減などコスト引下げの努力が払われたこと,契約納期が確実であることなどが世界の輸出船市場におけるわが国造船業の国際競争力を有利にしたことによるものである。
  輸出船の受注量を仕向国別にみると,リベリア向けが3億6,019万ドルで最も多く,以下ノルウェーの1億7,841万ドル,パナマの1億3,541万ドル,英国(バーミューダを含む)の5,685万ドル,メキシコの4,694万ドルと続いている。最近の輸出船の地域別受注比率をみると, 〔1−2−14図〕に示すとおり,ヨーロッパ向けが次第に増加している反面,ソ連を含む共産圏諸国からの受注が激減している。つぎにこれを船種についてみると,貨物船の受注比率が39年度の54%から40年度には63%と増加しており,とくに兼用船の受注量が39年度の4隻15万4,000総トンから40年度は27隻110万2,000総トンと大幅に増加している。

  船舶用内燃機関の輸出契約実績は,ディーゼル機関を中心として,40年は1,256万ドルに達し,39年の842万ドルに比べて49.2%の大幅な増加を示した。これを地域別にみると,東南アジア向けが全体の84%を占め,輸出の中心となっているが,共産圏およびヨーロッパ向けも着実な伸びを示している。
  40年度の造船業に占める輸出船の建造量は,主要27工場の竣工量についてみると,全竣工量511万総トンのうち306万総トン,60%を占め,39年度に比べて47万総トン増加しており,依然として重要な役割を果している。また40年における船舶の通関輸出額は,7億1,251万ドルに比べて49.6%の増加を示し,鉄鋼につぐ輸出実績をあげ,外貨獲得に大きく貢献している。
  41年3月末における輸出船の受注残は,798万総トンと前年同期の635万総トンに比べて41%増加し,41年度の工事量としては不定はないが,輸出船受注の将来は,必ずしも楽観を許さないものがある。不況にあえぐ西欧造船国のわが国造船業に対する巻返しの手は,国際政治機構,民間国際機関の名で活発に展開されてきた。スエーデン,ドイツ,オランダ,フランスなど西欧の造船会社は,政府の援助のもとに急速に巻返しを進めており,合併,統合化を通じて,規模の拡大と合理化を図っている。また,英国においては,造船業の問題点とその改善策を調査検討していたゲッテイス委員会が,3月24日に報告書を公表し,その中で,現在27ある主要造船所を45年までに4ないし5のグループに統合し,この新しいグループに対する政府の財政,金融援助を強化することによって,集約の2,3年後には年間生産量を近年の100万総トンから約225万総トンに拡大し,世界市場におけるシェアを12.5%に引きあげることを勧告している。このように最近の世界の動きとしては,造船業に対する政府助成はますます強化され,OECDの討議における国際協調の精神とは逆行している現状にある。
  わが国の造船業は,世界造船業界の王座にあるとはいえ,さらに西欧諸国のまきかえしが,OECDの場等を通して今後とも活発化するものと思われるので,今後の西欧諸国の動向に十分注目することはもちろんであるが,近代化,合理化に対して,たゆまぬ努力を払うとともに,安値受注による過当競争をやめ,将来に備える必要がある。


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