2 損益状況
昭和40年度における企業経営の一般動向を日銀「主要企業経営分析」によつてみると, 〔1−4−3表〕に示すように,39年上期から40年上期まで三期連続して,、全産業,製造業とも,売上高の伸びの鈍化と純利益の減少がみられたが,40年下期に至り売上高がそれぞれ3.3%,3.6%,純利益0.2%,44%の増加となりようやく回復のきざしがみえはじめた。
運輸事業においては,外航海運業,航空運送業など一部業種を除き, 〔1−4−4表〕に示すように,40年度においては前年度に引きつづき収入の伸びが鈍化し,各企業において合理化対策が進んでいるにもかかわらず純利益が減少しており,業種別によつては赤字決算となつている。
業種別にみると,国鉄については景気後退下の輸送需要の減少のほか,41年3月からの運賃改訂が40年度の経営成績にはわずかしか寄与してないため,前年に引き続き2年連続赤字決算とたつた。大手私鉄,営団については,40年度においても,営業収入,営業利益ともほぼ前年度なみのもようである。中小私鉄,公営鉄道の39年度損益は,営業利益において,中小私鉄が若干の赤字,公営鉄道が大幅な赤字であつたが,営業外損益を含めた純損益でみると,両者とも大幅な赤字であり,経営状態はきわめて悪い。
自動車運送事業については,乗合バス,路線トラック,小型トラックにおいて営業収入,営業利益,純利益ともに伸びているほかは,経営状況が悪化している。
通運事業については,運賃料金の改訂により,業務量の減少にもかかわらず事業収入はわずかながら増加したが,純利益は減少となつた。
外航海運業の収益状況は比較的好調で,貿易量の増勢を背景に船腹量の増大,海上運賃市況の好転に支えられ,40年度後半の海運争議にもかかわらず,償却後利益も黒字に転じ,減価償却不足額も大幅に減少した。
これに対し,内航海運業は,船腹過剰の上,企業の乱立による過当競争に起因する運賃の低迷等により経営状況は著しく不振である。また,旅客定期航路事業の経営は,輸送需要が停滞しているものの40年中に運賃改訂が行なわれたことにより,経営状況は若干改善している。
航空運送業(主要2社)については,国際路線の収支状況の好転により,増収,増益となつているが,国内線については,需要の伸び悩みと費用増大のため,経営状況は芳しくない。
倉庫業は中小・零細企業が多く,経営状況は一般に悪いが,主要6社については,営業収入においては順調な伸びを示している。
ホテル業は,39年度までの急速なホテル建設ブームが沈滞をみせた一方,減価償却費,支払利息が増加してきているため,収入の伸びが小さいこともあつて39年度の収支状況は赤字に転じている。
以上,運輸事業の損益状況の概要を述べてきたが,ここでとりあげている企業は,比較的規模が大きく,経営状況も比較的良好なものが多いことに注意する必要がある。
すなわち,自動車運送事業,通運事業,内航海運業,旅客定期航路事業倉庫業等の業種においては,本節でとりあげたもののほかにさらに中小零細な企業がきわめて多く,これら企業の多くが苦しい経営を余儀なくされていることを考慮に入れなければならない。
|