2 経営内容
以下の述べる数字は,乗合バス,貸切バス,ハイヤー・タクシーの各業種それぞれ50社をトラック裏業と同様に保有車両数規模別の分布に比例するよう抽出した企業について経営内容を集計分析して作成した資料によるものである。
(1) 収益性
旅客自動車運送事業の収益性は39年度にひきつづき乗合バス,貸切バスハイヤー・タクシーともに40年度は若干減益となり,中でも貸切バスは前年度の欠損がさらに増大した。
すなわち 〔I−(II)−18表〕(1)のように総資本利益率は,乗合バスとハイヤー・タクシーが夫々に0.1%,1.7%の減少がみられ,乗合バスは赤字幅が1.3%増大した。乗合バスと貸切バスでは総資本回転率はわずかに上昇しているが,営業収入利益率が低下したため総資本利益率が微落する結果となつた。ハイヤー・タクシーは総資本回転率,営業収入利益率ともに低下して総資本利益率が減少となつたものである。
これは乗合バスで39年10月から40年度中に260社に及ぶ運賃改訂があつたことによるもので,貸切バスで東京が39年10月,関東地域,東海,北陸地域が40年3月,近畿39年1月,愛媛,高知が40年2月とそれぞれ運賃改訂が行なわれたため, 〔I−(II)−18表〕(2)に示すように,日車当り営業収入が乗合バス8.7%,貸切バス6.7%の増加となつて,これがわずかであるが総資本回転率を上昇させたが 〔I−(II)−18表〕(3)でもわかるように人件費コストの上昇が,営業収入利益率,すなわち,利幅を低下させたために総合指標としての総資本利益率が低落したものである。ハイヤー・タクシーは運賃改訂もなく人件費の上昇が収益を圧迫したため総資本回転率も営業収入利益率もともに低下し,総資本利益率は旅客自動車部門で最高の1.7%の低落となつたものである。
いずれも労働集約的な自動車運送事業にあつて運賃の改訂もほとんどが人件費の上昇に吸収されてしまつていることは事業経営の大きい問題である。
(2) 生産性
旅客自動車運送事業における労働生産性は 〔I−(II)−18表〕(4)にみられるように,貸切を含むバス部門ではかなり伸長しているがハイヤー・タクシーは全く横ばいである。
乗合バスは労働力確保難を著しい人件費の上昇圧力に対処してワンマンバスの導入などによる経営合理化努力によつて生産性が逐年上昇し,40年には16.7%の対前年増加率となつた。
そしてここ数年来,常に人件費の上昇速度が労働生産性の上昇速度を上回つていたが40年には始めてこれが逆転して,人件費の上昇割合が労働生産性の上昇割合を下回つた。これは人件費の上昇が前年までより幾分低かつたことと,39年10月から40年中に行なわれた運賃改訂とに,行政指導も加わつてワンマンカーなどの合理化投資が急速に進められたためである。これが労働装備率(11.9%),設備生産性(10.6%)の伸長となつて表われているものと思われる。貸切バスは,不況による投資手控えによつて,新規固定資産が小さかつたため,労働装備率は伸びなやみ,乗合バスの11.9%に対し,2.5%の伸長に留つている。
しかし設備生産性22.3%の伸びは人件費が上昇し付加価値額が増加したことと,不況による先行き見通しの不安から,新規投資が抑制され,このため新規固定資産が小さくなり,従つて固定資産残高が伸びなかつたこと,これらの原因によつて設備生産性(付加価値÷有形固定資産)のいわば見かけ上の伸長となつて表われたものである。ハイヤー・タクシーは労働装備率が8%の減少となり,また設備生産性も余り伸びなかつたため労働生産性は横ばいとなつた。
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