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1 自動車損害賠償保障法の改正
自動車事故の発生防止のための対策を強化する必要があることは,上述のとおりであるが,他方すでに発生した事故による被害者の救済をはかることも重要な問題である。
このため,昭和30年に自動車損害賠償保障法が制定され,爾来11年にわたつて自動車による人身事故の被害者の救済に大きな役割を果たしてきた。しかしながら,近年原動機付自転車(道路運送車両法に規定するもので,その原動機の総排気量が125cc以下の二輪車及び50cc以下の車両をいう。)の普及発達は著しく,その車両数は41年4月1日現在736万両と,自動車の車両数(812万両)に匹敵する数に達している。このような車両数の増加は,性能の改良ともあいまつて,原動機付自転車による人身事故の増大を招いており,40年における死傷者数は91,000人に及んでいる。しかも原動機付自転車の保有者は,自動車の保有者に比べて一般に賠償能力が低いため,被害者が十分な救済を受けられないことが多いので,これら被害者についても,自動車による事故の被害者と同様,保障法による救済を受けることができるようにするため,保障法の一部が改正され,41年6月29日公布施行された。この改正の主な内容は次のとおりである。
(1) 原動機付自転車が法の対象に加えられた。これにより,10月1日からは,原動機付自転車も責任保険の契約を締結していなければ,運行の用に供することができなぐなつた(責任保険は8月1日から開始されている。)。また,10月1日以後は,責任保険の契約を締結していない原動機付自転車による事故の被害者及び原動機付自転車によるひき逃げ事故の被害者は,政府の保障事業による救済を受けることができる。
なお,原動機付自転車の責任保険については,政府の再保険は,行なわないことにたつた。
(2) 保険金額がひき上げられた場合,従来は,旧契約の自動車と新契約の自動車とで異なる保険金額となり,被害者に不均衡を生じていたので,このような事態が発生することを防止するために必要な措置を政令で定めることができることとなつた。この結果,後に述べるように,昭和41年7月1日に保険金額がひき上げられたが,既に締結されている契約についても同日以後の事故については,ひきあげ後の保険金額で支払われる。
(3) 農業協同組合及び同連合会が新たに責任共済の事業を行なうことができることになつた。これにより,自動車は,責任共済の契約を締結していれば責任保険の契約を締結していなくとも運行の用に供することができる。ただし,責任共済の契約を締結できる自動車は,政令で定められており,組合員等の軽自動車及び原動機付自転車と組合が保有する自動車に限られる。責任共済の契約の内容は,責任保険の契約と同一である。
(4) 農耕作業用小型特殊自動車(いわゆる耕うん機)は事故率がきわめて低いため,保障法の対象から除外された。
以上の改正点のうち,(3)および(4)の改正は,国会審議の過程における修正によるものである。
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