1　世界海運市況

　　一方,世界の商船船腹量は増勢を持続した。ロイド統計によれば,世界の商船(100総トン以上の鋼船)は,40年の年央において4万1,865隻1億6,039,万総トンに達し,前年同期より1,006隻,739万総トンと4.8%増加した。この増加率は,前年(4.9%)とほぼ同じである。これを船種別にみると,油送船の伸び率は,8.9%で前年(7.3%)に引き続き大幅な増大を示し,5,505万総トンに達したのに対して,油送船以外の船腹は,1億535万トンと伸び率は2.9%(前年3.7%)の増加にとどまった。
　　不定期船市況は,世界貿易の伸びが鈍化したにもかかわらず,市況刺戟要因が相次ぎ夏枯秋高といつた例年の型を破つて,年間を通じて極めて高水準に推移した。この不定期船部門の運賃市況を,35年を100とする英国海運会議所の運賃指数 〔II−(I)−２図〕でみると,1月116.1,3月124.1と堅調なスタートを切つたが,これは米国大西洋岸ガルフ諸港で行なわれた米国国際港湾労働組合のストライキによる船腹の滞船と,米国統一鉄鋼労働組合のスト気配に基づく海外からの在庫手当が急がれたことなどによるものである。とくに4月下旬には,ベトナム紛争に伴う米軍用船および軍事物資輸送が増大し,5月の指数130.5をはじめ,その後の市況堅調に大きな下支えとなった。

　　さらに6月から8月末にかけては,米国海員組合のストライキによる米国船の停船が行なわれ,6月125.7,7月130.6,8月128.1と例年の夏枯れと異る異例の高水準を示した。8月にはアルゼンチン,カナダとソ連との間に小麦,小麦扮の売買契約が発表され,9月の市況は134.1に達した。つづく10月,11月の市況はグレーン・タンカーの大量の就航と大型バルク・キャリアーの竣工が相ついだことなどのため,例年の秋高に反しやや軟化した。
　　12月には、油送船市況の冬期好転を反映し,クレーン・タンカーの一部が油送船市場へ復帰したこと,インド向け穀物輸送の増大などにより,133.5に昇り,年間平均運賃指数は,前年より12-8%増の126.5と大幅な上昇を示した。油送船市況は,前年に引き続き低落をみせた。これは低レートの大型油送船が増加し,市況を悪化せしめたことによる。年間平均では44.2と前年の47.5を下回つた。

　　係船量は,貨物船では市況の好転を反映して前年よりさらに減少し年央には31万4,000総トンまで減少した。油送船も穀物運賃の高騰に伴い前記のとおり大量に穀物輸送に転じたこと,米軍による用船の増大したことなどにより,市況の停滞にかかわらず,ここ数年来の最低を記録し,12月末には27万1,000総トンに減少している。