4 今後の見通し


  国際海運界の伝統である海運自由の原則は独占禁止思想と国家の貿易上の利益の追求との挾撃にあつて著しく侵害されつつあるが,反面明るい情報がないわけでもない。
  米国では,最近米船優先政策が,その意図に反して米国海運を非能率化し,競争力を弱めつつあるのではないかという反省が生じている。現に米大統領直属の海運諮問委員会等において海運政策の根本的検討が続けられている。
  低開発諸国の不満も,これらの地域に荷主協議会制度が確立され,あるいは,低開発国商船隊の同盟加入が促進されるにつれて解消してくるであろう。
  先進海運諸国は,OECDや12ヵ国海運会議の場でマルテイラテラルな協調を図りつつ,低開発諸国の要求に対処して行かなければならない。
  わが国は,欧州海運国と異なり,エカフェ地域の唯一の先進海運国という地理的環境におかれており,アジア諸国と密接な貿易上の関係にあるので,とくにアジア地域の海運情勢には重大な関心を有している。わが国としては,アジア諸国の国旗差別政策に対しては場合に応じ適切な態度を採るとともに,アジア地域の海運の健全な発展のために努力を続けなければならない。41年4月東京で開催された東南アジア開発閣僚会議において,わが国は,アジア諸国の港湾施設および内陸運輸施設の改善に重点をおいた地域開発計画の作成を奨励したが,港湾の整備は,低開発諸国の経済の発展,貿易の振興に役立つとともに,国際海運コストの低下をもたらすものであるので,この面での協力は,今後ますます必要となろう。


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