1 海運国際収支の現状
40年は,財政金融政策を主体とする景気のてこ入れが図られたが,生産は停滞気味で年間を通じて不況に推移した。このなかにあつて、輸出は米国を中心とする世界経済の好況とわが国の輸出ドライブが働いた結果著しく増加し,金額では前年比26.7%増の84億5,174万ドル,数量では2,338万トン対前年比32.5%の著増を示した。また輸入も金額では81億6,902万ドルと前年比2.9%増,数量で1億9,938万トン,前年比14.7%の増加をみせた。一方,外航船腹量は40年12月末に969万総トンと39年末に比べ11.9%の増加を示したが,荷動き量の増加に追いつけず,また1,000万トンを超える輸出鋼材が外船に多く積込まれたこと及び昨年11月から約2ヵ月間に及ぶ海運争議があつたことが大きく影響し,邦船輸送量は輸出では880万トンと,前年に比べ1.3%減少し,輸入では8,689万トンと12.4%の増加にとどまつた。この結果,邦船積取比率は,輸出37,6%,輸入43.6%とそれぞれ前年より12・9%,0.9%の低下を示した。
40年の海運国際収支は,輸送量の増加,運賃の上昇たどによつて,邦船の運賃受取りが増加したにもかかわらず,外国船への支払もまた増加し,貨物運賃収支は前年の2億2,200万ドルの赤字幅から2億8,600万ドルの赤字と,6,400万ドルの悪化となつた。また,邦船船腹の不足からくる大量の外国船を用船したことと,市況の好調による用船料の上昇によつて,支払用船料は前年の9,600万ドルから1億5,300万ドルヘと著増し,用船料を含む港湾経費等の収支尻は前年の1億8,800万ドルから2億1,100万ドルヘ悪化した。この結果総合で,39年の4億1,100万ドルから4億9,700万ドルヘと8,700万ドルしの大幅悪化を示した。
このように,40年の海運国際収支は貨物運賃,用船料の支払増加および海運争議等の諸要因によつて悪化したが,大量建造により建造される外航船の国際収支改善への寄与は,41年以降において現われてくるものと考えられ,今後徐々に改善の方向に向うものと考えられる
わが国の国際収支(IMF)は40年には4億400万ドルの黒字となつているが,近年の外貨保有高は20億ドル程度で,これは35年の水準とほぼ同水準であるが,貿易規模の倍増によつて,この保有高は,わが国貿易額の3ヵ月分にも満たない額である。したがつて国際収支の天井の低さは今後わが国経済の発展にとつていぜん障害として残されており,外航船腹の拡充による国際収支改善努力は,今後とも続けられる必要がある。
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