4 海運企業経営における国家助成


  40年度においては整備計画の実施状況からみても,各社の決算上の損益状況からみても,海運争議等の悪条件を克服して各社ともおおむね順調な推移を示したが,これらを支える多額の国家助成があつたことを忘れてはならない。
  すなわち新造船に対する利子補給金としては,39年度の倍額以上に相当する約31億円,三国間輸送助成金約8億円が支出され,また開発銀行の利予猶予額は約84億円が支出されている。利子猶予額は将来返納を義務づけられているものであり,したがつて会社決算上は費用に計上されているとはいえ,整備計画の取り扱いはこれを見做し償却とすることになつているので,償却不足が大幅に減少したといつても,これらの助成の効果を無視することができず,延滞解消の速度が早まつたといつてもその事情は同様である。さらに延滞解消については,現行の財政資金融資制度が3年間据置となつていることによる資金的余裕が大いにこれを助けていることを忘れてはならない。
  また税制上の恩典としては,租税特別措置法による輸出控除および割増償却の実施並びに登録税の減免等があり,40年度においては,これらの制度によつて相当額の税負担が軽減されている。
  40年度においては,直接助成だけで123億円の国家助成が海運業に対して行なわれたことになり,これを前記の償却前利益,659億円,延滞解消額293億円と対照すると,わが国海運業が順調に立直りつつあるとはいえ,その経営の実態は,いまだこれらの助成に全面的に依存するものである。
  しかしながら,海運業は,わが国の経済構造上緊要な地位を占めるものであり,かつ,きわめて抜本的な集約整備が実施された直後でもありこれらの助成,税制措置等は,今後とも継続されることが必要であるが,企業においては,このような経営に占める国家助成のウエイトを率直に認識し,たとえば,整備計画期間経過後猶予利子の返還が始まるときにおいて,いかにこれに対処するか等,やや長期的視野に立つて経営計画を樹立し慎重に行動すべきであろう。


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