5 財政状況
(1) 資産構成
40年度末における45社の総資産は,6,424億円に達し,前年度末に比べて801億円14%の増加となつた,資産構成の推移についてみると,流動資産は前年度に比し,82億円増加したものの,その総額は総資産のわずか15%,にあたる968億円にすぎず,また,固定資産は総資産の85%を占める5,456億円で前年度に比し,719億円増加している。固定資産の増加は,主として40年度において,大量の計画造船が推進され,その設備投資額が約810億円に達したことによるものである。
資産に関する主要財務比率についてみると,固定比率,すなわち自己資本に対する固定資産の割合は,前年度末の604%から,さらに620%と悪化している。本来海運業は資本の固定化が顕著な事業ではあるが全産業の194%40年上期と比べ3倍強に当つていることは,固定資産の他人資本への依存度の過大なことを示している。また,企業財務の安全度を示す指標であるところの固定長期適合率,すなわち,自己資本と固定負債の和に対する固定資産の割合は,この1年間に,121%から122%とほとんど横ばいであつたが,全産業の92%(40年上期)と比較すれば,現在なお海運企業財務の安全度は,他産業より弱体であるといえよう。
また短期支払能力を示す流動比率(流動負債に対する流動資産の割合)は49%から56%へと改善されたが,全産業の107%(40年上期)に比較すると約2分の1にすぎない。
(2) 負債および資本構成
総資本6,195億円のうち自己資本14%,他人資本(負債)は総資本の86%にあたる5,315億円であるが,この負債比率(自己資本に対する負債の割合)は前年度末の61.7%から61.2%とわずかながら改善されている。負債構成の推移をみると,流動負債は1,714億円で前年度末より112億円減少し,固定負債3,672億円で651億円の増加となつた,負債のうち,設備資金の借入残高は4,025億円であつて,その内訳は,財政資金2,763億円,市中資金が1,261億円である。
資本金についてみてみると,40年度中に10社が18億円の増資,2社が6億円の減資を行なつているので,12億円増加し,自己資本比率は14%とほぼ前年度末と同様であつた。全産業の自己資本比率24%と比較しても約2分の1にすぎない,自己資本比率の低下傾向は,わが国一般産業に共通的存ものであるが,海運業においては,とくに戦後の急速な船隊整備をすべて他入資本に依存しなければならなかつたためである。
海運業における負債は,財政資金のウエイトが高くやや他産業の負債とは性格の異るものであること,専用船,油送船等については長期の収益性が担保されていること等を考慮すれば,財務比率の改善目標もまた企業の業態に応じて弾力的に設定されることが望ましい。かつまた,現在コンテナ船の建造問題がわが海運界にとつて大きな課題とされており,油送船の大型化の傾向もますます顕著であつて,海運企業がさらに大規模な設備投資を必要とする時期は近い。したがつて財務比率の改善については,これらの政策的要請との調和をはかりつつ,弾力的かつ漸進的に行なうことが望まれる。
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