1 内航海運の概況


(1) 輸送量

  40年度の貨物輸送量は前年度に比べて9%増の1億7,965万トンとなり,輸送活動量は前年度に比べて5%増の806億トンキロとなつた。
  これを船種別にみると 〔II−(I)−11表〕のとおりであつて,40年度においても,木船による輸送量は前年度に引きつづぎ減少しているが,小型鋼船による輸送量は著しい増加とたつている。輸送量からみると小型鋼船が全輸送量の約半分を占め,大型鋼船,木船の輸送割合はそれぞれ約4分の1となつている。これを輸送活動量からみると大型鋼船が半分を占めており,木船の占める割合は平均輸送距離が他に比べて短いために全輸送活動量の11%に過ぎない。

  主要貨物の輸送実績は 〔II−(I)−12表〕のとおりであつて,大宗貨物である石炭は石炭産業の不振を反映して40年度も減少を示しているが,石炭を除く他の主要貨物の輸送量は増加している。しかしながら,砂利類,鉄鋼,セメント,石油製品の建設,重化学工業の主要原材料および半製品の輸送は40年度における鉱工業生産の伸び率の鈍化を反映して,いづれも輸送の増加率は前年度に比べて鈍化した。40年度において著しく輸送の増加したものは機械類である。機械類の輸送増は自動車専用船による自動車の輸送が急速に増加してきたことによるものである。40年度の機械類の輸送量は前年度に比べて2.8倍となつており,このため,前年度において全輸送量の中で1.8%に過ぎなかつた機械類の輸送量は40年度には4.6%を占めるることとなつた。

  このほか,自動車航送船による輸送が急速に増加してきた。輸送貨物を品目別にみると雑工業品がもつとも多く,ついで,化学工業および窯業品,繊維工業品が多い。自動車航送船の航路のもつとも多い瀬戸内海における輸送量は 〔II−(I)−13図〕のとおりであつて,37年度以後急激に増加し40年度輸送量は36年度輸送量の12倍となつている。なお,40年11月末から本年1月にかけて行なわれた海運争議においては,9,790日隻1,275万3,000日総トンの内航船舶が停船した。その大部分が500総トン以上の大型船であつたために,12月の大型鋼船の輸送量は大幅な減少とたり,一部輸送需要に対処できないものもあつた。しかし,小型鋼船,木船の稼動により,全体として,海運争議による著しい影響はみられなかつた。

  内航貨物輸送においては,石炭,石油製品,セメント,石灰石,砂利等,鉱工業原材料およびその半製品が大宗貨物である。したがつて,これらばら貨物が内航輸送量の89%を占めており,機械類,農産物,および雑貨はわずか11%に過ぎない。さらに輸送地域別にみると北海道,京浜葉,中京,阪神,山口,北九州の大平洋沿岸の臨海工業地帯が大部分を占めている。
  今後における国内貨物の輸送需要は,二次産業の発展に伴つて増加し,とくに石油製品,建設資材等の需要増加,農畜産品の輸送遠距離化などが予想され,このうちで内航海運は臨海工業地帯を中心として進展していく重化学工業化のテンポに応じて,臨海工業地帯相互間および臨海工業地帯と大消費地間の大量貨物の輸送において,主要な役割を果すことにたると予想される。

(2) 船腹量

  40年6月現在におけるわが国内航船舶は約2万隻,300万総トンに達しており,これを船質別,船型別にみると 〔II−(I)−14表〕のとおり,木船は約1万5,000隻で全隻数の75%を占め,船腹量においては約90万総トンで,全船腹量の30%を占めている。また,100総トン未満の船舶は,隻数では全隻数の69%を占めており,そのほとんどが木船であるが,船腹量では全船腹量の20%に過ぎない。500総トン以上の大型船は隻数ではわずか5%にすぎないが,船腹量では40%を占めている。大型船の船腹量の割に前述の輸送量が少いのは,500総トン未満の船舶と比べると長距離輸送に従事しているためであつて,このために輸送活動量においては約50%を占めることとなつている。

  40年12月における内航船腹量を40年度に設定した40年度以降5年間の適正船腹量と比較すると 〔II−(I)−15表〕のとおりであって,全体で40年度において76万総トンの過剰となつており,とくに貨物船は著しい船腹過剰となつている。

  このような船腹の過剰の反面,内航海運には老朽不経済船が81万総トンもあり,さらに前述のように小型船が多く,国民経済の要請に応えうる経済的適船が少ないので,海運造船合理化審議会は長期的見通しのもとに特定船舶整備公団による船舶の代替建造を促進する必要があること,この措置の推進によつても内航船腹の均衡が達成されるまでには相当の日時を要するので,解撤,係船,船舶輸出等についての対策をすみやかに検討することを要望した。

(3) 内航海運企業

  内航船腹は前述のとおり著しく過剰であり,しかも老朽船が多く,経済的適船が少いが,一方,内航海運企業も, 〔II−(I)−16表〕のとおり約1万8,000に達する中小零細業者の乱立状況にある。

  このうち登録事業者について,さらにその詳細を見ると 〔II−(I)−17表〕のようになつている。

(4) 内航海運組合

  内航海運組合法の適用範囲は,39年の改正により内航海運業者の総てに拡大され,内航海運業者の組織化が急速に進められ,40年11月現在登録を受けた内航海運業岩の92%が内航海運組合に加入するに至つた。さらに内航海運組合のなかで全国的組織の5海運組合により日本内航海運組合総連合会が40年12月結成されて,内航海運業者の組織化という内航海運組合法の目的の一つは一応達成されることになつた 〔II−(I)−18表〕

  このように組合の組織化が進められるとともに,その機能の強化も図られてきた。まず内航海運業者の経済的地位の向上と過当競争の排除のための調整行為では,調整運賃が17組合により実施され,さらに標準運賃との関連で逐次主要航路、貨物について調整運賃設定の準備が進められている。このような調整行為のみならず,全国内航タンカー海運組合の共同係船場の設置にみられるような共同事業も行なわれてきており,今後,このような組合員のための共同事業の積極的な実施が望まれている。


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