2 悪化する経営状況


  内航海運業者は,前述のとおり零細業者が多く,また他事業と兼業しているものが多いため,その全体の経営状況の把握はきわめて困難であるが,内航海運業を主力とし,かつ,経営的に良好とみられる事業着50社についての40年度の経営状況をみると, 〔II−(I)−19表〕のとおりとなつている。

  営業収支および営業外収支からみた経常損益では3.500万円利益とたつているが,前年度と比べてみると約半減しており,特別損益を含めた純損益では3億9,900万円の欠損となつている。
  この結果償却不足額は前年度以上に増加し,償却不足累計額は23億円にも達している。また自己資本比率は前年度の10%から8.6%へとさらに悪化しており,他産業や他の運輸業と比較してもきわめて低い状況にあり,経営基盤の劣弱さを物語つている。
  なお,海運争議の際問題となつた内航2船主団体(火曜会,一洋会)に所属する貨物船主力業者55社の40年度上期の経営状況は,償却後損益3億6,200万円の欠損であり,また資本金累計37億2,400万円に対し,累積赤字(繰越欠損金および償却不足累計)は,39億6,600万円に達している。
  これは基本的には,船腹の過剰と企業の乱立による過当競争に起因する運賃の低迷と船員費等海運業費用の高騰によるものといえよう。
  内航海運業者は,1万8,000業者にも達しており,そのほとんどが零細業者である。他方,内航輸送貨物が,重化学工業の原材料およびその半製品であるためにこれら貨物の荷主は海運業者とは比較にならぬ程大きい企業である。方内航船舶は適正船腹量に比べて著しい過剰となつており,その過剰量は全船腹量の25%にも達している。このため,内航海運の運賃は 〔II−(I)−20表〕のとおり,長年にわたつて低迷している。

  一方,海運業費用は年々上昇しており,とくに海運業費用の中で大きな比重を占める船員費の上昇は大きい。前記50杜の船員費の海運業費用に占める割合は21%であるが,船員費は39年度に比べて18.5%の上昇を示しており,今後も船員費の上昇はさけられないものと考えられる。一方運賃収入は39年度に比べて6.6%の上昇にすぎず,このままでは経営状態は益々悪化し,好転は望みえない。
  国内貨物輸送量は今後ますます増加するものと予想されるが,国民経済の要請に応えていくために内航海運はつぎのような措置が要請される。
 @ 輸送量の増大に対する輸送能力の増強
 A 技術革新により,今まで船舶の貨物とならなかつた少量貨物および新規貨物の大量海上輸送の発生に対する,新しい能力をもつ専用船の建造
 B 船舶の自動化による乗組員数の削減
 C 新しい輸送方式の採用,開発による輸送費の低減
  このような内航海運の近代化を中心とする諸要請に対して,経営状態の悪化を続ける内航海運はそれに応えていくことはできない。
  このため、40年度に政府が行つた施策の主なものはつぎのようなものである。


表紙へ戻る 次へ進む