3 40年度に行なった主な内航海運対策


(1) 最高限度の設定による船腹量の抑制

  前述のように内航船腹量は著しい船腹過剰であるので,運輸大臣は10月27日海運造船合理化審議会に対し,「船腹量の最高限度の設定の必要性の有無と必要な場合における最高限度量」について諮問を行ない12月6日に答申をえて,つぎのように最高限度を設定した。すなわち,適正船腹量と現有船腹量を比較すると 〔II−(I)−15表〕のように貨物船については著しく過剰であり,油送船も放置すれば著しく過剰になるおそれがあるが,セメント専用船は現有船腹量がほぼ適正であり,需給関係からみても著しく過大になるおそれはないので,貨物船と油送船についてのみ最高限度を設定する必要がある。
  船腹量の最高限度については,翌年度の輸送需要に対応できるとともに,それ以上に著しく過剰にならないことを目途として翌年度と翌々年度の中間値とすることが妥当であるが,貨物船については現有船腹量がすでに計算上の最高限度を越えているので,現有船腹量をもつて最高限度とする。
  これにより最高限度は,貨物船221万5,000総トン,油送船63万9,000総トンと策定され12月16日に年間の期間を定めて告示された。
  これにより貨物船および油送船の船腹量の増加に係る登録については,解撤等が義務付けられ,船腹量の増加が抑制されている。

(2) 内航海運対策

  38年度以後,内航老朽不経済船を解撤して,近代的経済船を建造することにより船腹量の削減を図つてきたが,内航船舶の過剰状態は前述のように著しく,このような方法では内航船腹量を調整して経営の安定を図ることは不可能であるので,40年5月10日内航海運業の安定策として「内航海運対策要綱」を閣議決定した。この要綱の要旨はつぎのとおりである。

  内航海運対策要綱要旨

 I 近代的経済船の整備と過剰船腹の処理

 @ 今後3カ年間,毎年度13万総トンの内航専用船および近海就航船の建造を行なう。

      この建造に関しては,内航老朽船の解撤を義務づけ,その解撤比率は1:1.5とし,解撤は41年度内に一挙に行なう。

 A 41年度に解撤し,42年度または43年度に建造を行なう者(以下「解撤建造者」という。)に対し,特定船舶整備公団(以下「公団」という。)は,解撤船の買入のための所要資金について融資または債務保証を行なう。公団の融資の資金は民間資金を活用することとし,これに伴う公団の債務に対し,国は保証を行なう。国は,解撤建造者に融資を行たう公団および市中金融機関に対し利子補給を行なう。

      国は,公団が融資または債務保証を行なうことによつて損失をこうむつたときは,その損失を補償する。

 B 内航海運組合は,共同係船を行なう。この場合公団はその内航海運組合に融資を行なう。

      公団の行なう係船融資の資金は,財政資金と民間資金を活用する。これに伴う公団の債務について,国は保証を行たい,さらに国は公団に対し,調達資金に係る利子補給をし,公団に損失が生じた場合はその損失を補償する。
      係船融資については,内航海運組合は,組合員より納付金を徴収し,その納付金をもつて弁済させる。

 II 内航海運企業の適正規模化

 @ 内航海運企業の企業規模の適正化を推進するため,事業を許可制とするものとし,今国会で所要の法改正を行なう。

 A 運賃の認可制の実施については,内航海運の合理化,近代化のための諸般の体制の整備状況を勘案して決定する。IIの内航海運企業の適正規模化については@内航海運業を許可制とすること,A許可の基準として内航運送業について船腹量の基準を定めること,B許可制への切替は昭和44年3月31日までとすること等を内容とした内航海運業法の一部改正案を第51回通常国会に提出したが,継続審議となり,第52回臨時国会においても継続審議となつている。

      これらの諸施策は,内航海運に対する国民の認識および国罠経済の要請から生れたものであり,実施にあたつての困難を克服して所期の成果を収めなければならない。

(3) 標準運賃の設定

  一般に卸売物価は横ばい状態を続けているが,内航運賃は下落傾向を示している。この結果,内航海運の経営基盤は前述のように償却不足が累増して,極度に脆弱化し,安全性の低い老朽船の代替もできず,また修繕も延期するなどの原因により,小型鋼船の海難は増加し,また木船は全損率が高まつている。
  このような状況にかんがみ,内航運賃の正常化が必要とされる。もちろん,内航運賃の正常化は,いたずらに高運賃を求めることではなく,流通経費合理化の要請に即応するものでなければならず,このためには,経済的適船の整備と企業の近代化,合理化が必要であるが,また企業コストを著しく割ることであつてはならない。このため,企業の合理化を推進するとともに,適正原価による標準運賃の設定が必要とされる。
  内航海運における標準運賃の設定は,40年6月の「標準運賃の設定および運用の基本方針について」の海運造船合理化審議会の答申に基づき同月,石炭,鉄鋼,石油の3品目に関する主要航路の運賃が諮問され,41年4月に運輸審議会から標準運賃に関する答申があり,41年6月7日,この答申に基づきつぎの標準運賃が告示された。

  33年以降低迷している内航運賃市況を建て直すためには,標準標準運賃を実効あるものとすることが必要であるが,一方内航船腹の調整とともに荷主産業界の協力をえて,船舶の稼行率の向上を推進し,海運における流通の合理化を今後とも進めることが必要である。


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