2 港湾施設利用の実態
港湾機能の本質的な部分は,岸壁とその直背後の上屋,荷さばき地等の荷さばき施設からなる埠頭部分である。港湾の利用で主として問題になるのはこの部分である。
港湾法による通常の埠頭の利用形態は次のとおりである。本船の入港スケジュールが決まれば,船会杜またはその代理人である港湾運送事業者が,港湾管理者に対し岸壁の使用願を提出する。港湾管理者は水深等を考慮し,バースが空いていれば先着順に使用を許可する。また,上屋,荷さばぎ地等については,荷主は本船を手当して,出荷の日が決まれば上屋の使用願を提出する。港湾管理者は,当該貨物の積みこまれる船舶の着岸岸壁が決つていれば,当該岸壁の直背後の荷さばき施設に搬入を許可する。陸揚げの場合もほぼこれと同様である。
このような無差別,先着順利用は,入出港船舶や取扱貨物量の少ない,比較的規模の小さい地方の港湾においては円滑に運営されている。
しかし,入出港船舶や貨物量が多く,埠頭の数の多い主要港においては,これと異なつた特殊利用形態のとられることが多くなつている。施設の効率的利用の観点からすれば,般公衆が無差別に先着順に岸壁を使用することはかえつて港の秩序をそこたうおそれがあるので,航路別または貨物別に岸壁を管理使用することがむしろのぞましいし,これは公共規制に反するものではな:いと考えられるからである。
岸壁とその背後の上屋とを有機的に一体として運営することも利用効率増進という面から璽要であると港湾に:おける作業形態としては,本船の直背後の上屋から本船に穰みこまれること(揚げの場合にはこの逆の経路をたどること)が理想的である。しかし,実際にはこの経路をとらず,岸壁を通らずに,はしけで穫み揚げされるものや,岸壁を経由しても直背後の上屋を経由せずに直接本船へ運びこまれたり,本船から他の上屋や奥地へ運ばれるものが多く,港湾の利用上大きな:問題となつている。すたわち,前者の場合には上屋の中で荷さばきされるべきものが米整理のままで本船に積みこまれるため,積付けのため
の船内荷役に時間がかかり本船速発が妨げられるほか,はしけで運ぶため,荷傷みや滅失の機会が多い。また後者の場合にも船内での積付けに手間がかかることは前者の場合と変りがないうえに,本船接岸岸壁のニプロンにおける貨物の円滑な流れを阻害する結果となる。
〔II−(III)−13表〕は直背後の上屋を経由する貨物の比率を経岸率として,主要8港の積み揚げ別経岸率を示したものである。これによると,横浜で積みが5.5%,揚げが12.8%,神戸で積みが10.2%,揚げが15.6%と,規模の大きい港において特に経岸率が小さぐなつている。8港合計で前年の数字と比較してみると,積みで前年の8.4%に対し13.2%,揚げで前年の24.9%に対し32.3%と多少改善されてはいるが引き続いて低い経岸率となつている。
このように,経岸率の低い原因としては,はしけによる長距離回送があること,専用使用化されている上屋があつて,その直前の岸壁との有機的一体性が確保されない場合のあること,バース不足のため,バース指定が遅れる結果,積みこみ船舶の使用岸壁の決定しないうちに貨物が上屋に搬入されてしまうこと,港湾運送の一貫体制が確立されていないことなどがあげられる。
|