1 世界の航空輸送界における輸送機の就航状況および新機種の開発状況
昭和40年12月末現在,世界の定期航空会社が使用している輸送機は総数5,695機に達している。その内訳はターボ・ジェット機が1,320機(総機数に対する割合は23.2%),ターボ・プロップ機986機(同17.3%),ピストン・エンジン機3,389機(同59.5%)である。このうちターボ・ジェット機は機数が年々増加しているのに対し,ピストン・エンジン機は年々減少する傾向にある。また,中間機種と呼ばれるターボ・プロップ機は現益のところ機数の増減はあまりない。一方,各種機材の輸送力(この場合利用可能トンキロという)を見ると,機数においては全体のわずか23%を占めるに過ぎないターボ・ジェット機が年間総輸送力の76%を提供し,残りの13%をターボ・プロップ機が,11%をピストン・エンジン機がそれぞれ提供しており,ターボ・ジェット機の輸送力が圧倒的に大きいことが判る。
次に新しい機材の開発については,輸送需要の顕著な増加および航空輸送の高速化に対処するため現在,超大型ジェット機および超音速機が開発の途上にある。前者の超大型ジェット機には昭和44年末に就航するといわれるボーイング-747型機がある。この超大型機は本年4月,パンアメリカン航空が25機の大量発注を行なったことで,一躍航空界の関心を集めた。この巨人機は378名〜490名を乗せ音速に近い時速1,005キロの速度で9,600キロの距離を無着陸飛行する性能を持つといわれる。また,ダグラス航空機会社は,現在のDC-8型大型ジェット機の胴体を伸ばし250人乗りとしたDC-8型83シリーズ機の開発を始めたが,さらに昭和45年以降における輸送需要の飛躍的増大を予想して600人乗りのDC-10型超大型機を開発することを検討している。また,中,近距離路線における大豊輸送のため,現在の大型,中型ジェット機を改良して約250人乗り程度のいわゆる,“空のバス"とする構想が,米国および英仏共同で具体化しようとしている。
次に,超音速旅客機(SST)については,米国とソ連は独自に,英仏は共同で,それぞれ開発計画を進めている。このうち米国の超音速旅客機は昭和35年末から開発を開始し,現在は製作会社が最終設計の詳細案を本年9月末日までに政府に提出,その審査に合格した機種のプロトタイプ機が明年1月より製作される予定である。その性能としては,旅客250名を乗せて音速の2.7〜3倍の速度で6,400キロの距離を飛ぶものになる。初飛行は昭和45年,定期業務に就航するのは昭和49年頃の見込みである。日本航空(株)は去る38年11月,同機5機を発注している。
英仏両国は,昭和37年から共同で超音速旅客機“コンコード"機の開発を進めており,42年には機体の組立てに続き各種のテストを行ない,43年2月には初飛行,47年には定期業務に就航する見込みである。旅客134名を乗せ,音速の2.2倍の速度で6,400キロの距離を飛ぶ性能をもつものになる。
ソ連が開発中の超音速旅客機TU-144型は昭和40年その模型が公表され話題となったが,その開発のテンポは“コンコード”機よりやや早いといわれる。旅客121名を乗せて音の速さの2.35倍で6,500キロの航続距離をもつものになるといわれる。
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