3 出入国手続
観光客の国際往来は出入国手続の難易によつて影響されるところが大きい。したがつてその手続が合理的かつ能率的に行なわれることが望ましい。
現在,世界の大勢は国連観光会議の勧告(1964年),OECD観光委員会の決定(1965年)等にみられるとおり,国際旅行の自由化を理想として,その障害となる出入国手続は,できるかぎり簡易かつ迅速なものにしようとする方向に向つて進んでいる。
わが国においても,こうした世界的な動きに対応して,出入国手続の簡易迅速化が図られている。以下,わが国の出入国手続に関し,(1)旅券,査証および入国審査,(2)通関,(3)検疫,(4)通貨および為替管理の各項目ごとに述べることとする。
(1) 旅券,査証および入国審査
わが国を訪れる外国人は,原則として在外公館の領事官から査証を受けた有効な旅券を所持していなければならず,さらに,入国港において入国審査を受けなければならない。ただし特例として,72時間以内滞在の一時上陸客や観光のため通過上陸する船舶利用客(上陸期間15日間)の場合には,査証なしでも入国が許可されている。また,わが国との間に査証相互免除取極を結んでいる国の旅券所持者は,観光その他若干の目的のため,短期間(3ヵ月又は6ヵ月)滞在する場合には査証を要しない。昭和41年4月現在査証の相互免除相手国は22ヵ国である。このほかさらに5ヵ国と査証料相互免除ないし減額に関する取極を結んでいる。また,アメリカ,カナダ等との間では,原則として6ヵ月間(観光客および通過客については4ヵ月)1回限り有効の査証を,相互に一定期間(アメリカについては48ヵ月)数次有効とするなど,旅行者の便宜を図るための措置がとられている。
今後の簡易化の方向としては,査証免除相手国数の増加,特例上陸の適用範囲の拡大等を図るとともに,さらに,世界的な出入国手続簡易化の動きに対応して,身分証明書の旅券代用の承認,団体旅券使用の承認,団体査証の発給等を検討する必要がある。
(2) 通関
旅客の携帯品については,通関手続の簡易迅速化の見地から一般の貨物とは異なつた簡易な手続が認められている。とくに,観光客等の外客に対しては,専用の検査台を設置するとともに,別送貨物がある場合の別送申告を除き,すべて口頭申告により一部抽出検査をもつて簡易迅速な通関を図つている。また,外客が搬帯または別送して輸入する物品のうち,その個人的使用に供するものおよび職業上必要な器具で,税関が適当と認めるものは,関税を免除している。
さらに外国人観光旅客が持ち込む自家用自動車については,39年に「道路交通に関する条約」および「自家用自動車の一時輸入についての通関に関する条約」に加入した結果,簡易な通関が認められている。
(3) 検疫
わが国の検疫は,国際衛生規則の定める国際的な基準に従つて行なわれており,その検査手続も簡易迅速化が図られている。しかしながら,近隣諸国においては,コレラ等の検疫伝染病がしばしば発生しており,それらの国内侵入の危険性がある。したがつて検疫の万全を期するためには,簡易迅速化にもある程度の限界があるのはやむを得たいところである。
(4) 通貨および為替管理
外国人旅行者による通貨の持込み,持出しについての制限は世界的に廃止の傾向にある。わが国の場合,外貨または円貨を本人が携帯して持ち込むことおよび入国時に持ち込んだ外貨を出国に際して持ち出すことは,税関の確認を受けるだけの手続で,額に制限なく認められている。また,両替については,全国に約1,600ある外国為替公認銀行の取扱店舗および両替商で自由に認められているほか,再交換についての金額制限もないので,一般の外国人観光旅客が不便に感じるような問題は,とくにないものと考えられる。
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