2 企業経営
(1) 経営状況
内航海運企業は,前述のとおり零細企業が多く,また,他の事業を兼業している場合が多いため,その全体の経営状況を適確には握することはきわめて困難であるので,内航海運業を主力とする法人49社について,41年度の経営状況をみると, 〔II−(I)−14表〕のとおりである。
営業収益は,輸送貨物量の増加に伴つて順調な増加を示しているが,一方,営業費用も収益と併行して増加しているため,純利益は3,500万円となつている。その結果,累積損失はやや減少したが,約10億円の次期繰越損失を計上しており,全般の経営状況は,依然として低迷を続けている。
規模別にみると,資本金5,000万円以上の企業がわずかに純利益を計上しているが,これとでも総資本純利益率0.32%という状態であり,資本金5,000万円未満の企業は,依然として損失を計上し,累積損失が増加している。
このように貨物輸送量が増加しているにもかかわらず,収支状況が改善されないことの最大の原因は,船員費をはじめとする営業費用の高騰に対し,船腹過剰に起因する過当競争の結果,適正な運賃率を確保することができなかつたためと考えられる。しかし,41年6月に標準運賃が告示されこれに基づいて主要海運組合が調整運賃を設定し,41年度末にこれが認可されたことにより,このような傾向は,徐々に改善されるものと思われるが,膨大な累積損失を解消し,近代産業として企業体質の向上を図るためには,相当長期間にわたる努力が必要であろう。
(2) 内航運賃
零細企業の乱立と船腹の過剰による過当競争,荷主への従属等のため,内航運賃は32年以降低迷を続けていたが,41年6月に標準運賃が告示されたのを契機として,関係海運組合において,多くの航路について内航海運組合法第8条に基づいて調整運賃を設定し,慢性的不況を克服するため運賃適正化への方向に進みだした。
すなわち,標準運賃設定当時における標準運賃設定航路の実勢運賃は,高低に相当の差が認められ,とくに荷主への従属性が強い企業は,運賃が低位に押えられていた。しかし,その後,42年2月,3月に内航大型船輸送海運組合,全国内航輸送海運組合,全国内航タンカー海運組合の調整運賃が認可されたことによつて,これらの低運賃は改善され, 〔II−(I)−15表〕にみるとおり調整運賃設定航路に関する限り,このような運賃格差ばなくなつた。ただ油送船については,荷主への従属性がきわめて強いこと,組合の結束力がよわいこと等のために,いまだ調整運賃は,実効をあげていない実情にある。
以上のように内航運賃は,標準運賃,調整運賃の実施により,改善の方向に向いつつあるが,内航海運が安定した輸送力を提供し近代化された流通体制を整えるためには,事業の許可制への移行を契機として企業基盤の強化を図るとともに,内航海運組合を一層強化することによつて,荷主に対する従属的地位を脱却し,調整運賃を標準運賃の水準まで高める必要がある。
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